2021 Fiscal Year Research-status Report
ゴルドーニの演劇作品およびオペラ台本に見られる伝統と革新
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20K00493
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴルドーニ / 演劇 / 18世紀 / 古典 / 舞台芸術 / 劇場 / 批評 / 革新 |
Outline of Annual Research Achievements |
地中海学会研究会で「ゴルドーニの『スタティーラ』 ―演劇改革の萌芽」の発表を行った。これは2017年度に発表した「ゴルドーニの『スタティーラ』をめぐって」を改稿したものだが、以前の発表のテーマであるヒロイン像の変遷を、今回はゴルドーニの演劇改革の視点から捉え直すものとした。早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所例会では発表「ゴルドーニ作品に見られる異邦人の表象 ―東方を舞台とした作品を中心に」を行い、ゴルドーニ作品に描かれた異邦人像の源泉を、古典または同時代の歴史資料に求めることを通して、ゴルドーニの古典または同時代への向き合い方を探る試みを行った。イタリア学会の国際ダンテ・シンポジウムでは「18世紀におけるダンテ批評ーヴェネツィアの文人達とダンテ」の題で、ゴルドーニの演劇批評を行った18世紀の文人達によるダンテの再評価について論じた。ダンテ批評に見られる文芸批評の転換が、ゴルドーニ批評にも反映されている。また前年発表の論文「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性 ―ゴルドーニによるマルテッリアーノ使用をめぐって」に続き、『日本18世紀学会年報』に論文「イタリア近代演劇と上演空間 ―ヴェネツィアの劇場とゴルドーニ」を発表し、ゴルドーニ演劇と劇場の関係について論じた。東京藝術大学出版会から、博士論文を最新の研究成果を含めて改稿したものを『啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの場合』として出版し、近年の自身のゴルドーニ研究の総まとめを行った。さらに昨年度に続いてCOVID-19影響下のイタリアの舞台芸術についての研究を行い、論文「COVID-19影響下の舞台芸術と文化政策:欧米圏の場合 イタリア編」を発表したほか、小論「パオロ・グラッシ ~文化芸術の“演出家”~」で、ゴルドーニ作品の上演で知られるミラノ・ピッコロ座の監督グラッシが行った文化的貢献について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口頭発表「ゴルドーニ作品に見られる異邦人の表象 ―東方を舞台とした作品を中心に」を行い、ゴルドーニ作品に描かれた異邦人像の源泉を、古典または同時代の歴史資料に求めることを通して、ゴルドーニの古典または同時代への向き合い方を探ることで、ゴルドーニ作品と古典または同時代の新しい時流との関係を捉え直すことができた。また発表「18世紀におけるダンテ批評ーヴェネツィアの文人達とダンテ―」のための研究を通じて、ゴルドーニの演劇批評を行った18世紀の文人達による文芸批評の転換を確認したことで、ゴルドーニの演劇作品のみならず、その批評における伝統と革新についても認識を深めることができた。さらに前年発表の論文「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性 ―ゴルドーニによるマルテッリアーノ使用をめぐって」における劇場空間についての考察をさらに押し進めた論文「イタリア近代演劇と上演空間 ーヴェネツィアの劇場とゴルドーニ」の研究を通じ、ゴルドーニ演劇と劇場の関係について具体的に捉え直すことができ、劇場と作品の関連性に一層の注意を払う必要性に気づかされた。最新の研究成果を含めて博士論文を改稿した『啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの場合』の出版により、近年の自身のゴルドーニ研究の成果を振り返ることで、今後は喜劇のみならずオペラ台本における伝統と革新の問題についても研究を深めていくという、自身が進むべき方向が再確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
発表「ゴルドーニの『スタティーラ』 ―演劇改革の萌芽」を論文化したものを、『地中海学研究』に発表予定である。また発表「18世紀におけるダンテ批評ーヴェネツィアの文人達とダンテ―」を論文化したものも、共著論文集に収録され、刊行される予定である。その他、ゴルドーニ作品における異邦人の表象を扱った発表「ゴルドーニ作品に見られる異邦人の表象 ―東方を舞台とした作品を中心に」を、2019年にInternational Congress on the Enlightenment にて口頭発表した同様のテーマによる「Rethinking Goldoni’s tragicomedy La sposa persiana through comparison with past Venetian theater works」と共に、論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延により、学会等がオンライン開催となり出張がなかったため、残額が生じた。残額は、次年度の学会出張等の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)