2022 Fiscal Year Research-status Report
ゴルドーニの演劇作品およびオペラ台本に見られる伝統と革新
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20K00493
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴルドーニ / 演劇 / 18世紀 / 古典 / 舞台芸術 / 劇場 / 批評 / 革新 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度地中海学会研究会で口頭発表した「ゴルドーニの『スタティーラ』 ―演劇改革の萌芽」の発表内容を論文化したものを、『地中海学研究』に発表した。ゴルドーニに関しては、イタリア研究会で「啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの例を中心に」、イタリア史研究会で「ゴルドーニの作劇における歴史資料の活用について」、日仏演劇協会で「フランス演劇とゴルドーニ」とのタイトルで口頭発表を行い、りゅーとぴあ・世田谷パブリックシアターで上演されたルイージ・ルナーリによるイタリア現代劇『住所まちがい』のパンフレットに、ゴルドーニに関するものを含む以下の論考3本、「コンメディア・デッラルテとは?」、「イタリア演劇のキーワーズ」、「イタリア演劇小史」を発表した。また昨年度上梓した『啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの場合』の合評会を西洋比較演劇研究会で行い、その詳細な報告を『西洋比較演劇研究』に発表した。共編著『啓蒙思想の百科事典』でも、共著項目「演劇」と「オペラ」、単著コラム「啓蒙期の西洋舞台芸術における異郷」で、ゴルドーニの演劇とオペラについて執筆した。早稲田大学オペラ/音楽劇研究所主催で行われた、ゴルドーニの同時代人で、オペラ改革を行った作曲家グルックに関する「グルック・シンポジウム:オペラ《オルフェーオとエウリディーチェ》とその周辺」で、「オルフェーオをめぐるテクストの変遷 ~イタリアの演劇作品とオペラ台本を例に」のタイトルで口頭発表を行い、概要を報告書にまとめた。その他、松田聡著『モーツァルトのオペラ 全21作品の解説』の書評を『日本18世紀学会年報』に、丸本隆・嶋内博愛・添田里子・中村仁・森佳子編『パリ・オペラ座とグランド・オペラ』の書評を『演劇学論集』に、論考「2022年の日本におけるイタリア演劇の上演」を『悲劇喜劇』に、それぞれ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴルドーニの『スタティーラ』は、17世紀以来歴史主題のオペラの主人公に取り上げられてきたペルシアの女性スタティーラを主人公とするオペラ台本である。論文「ゴルドーニの『スタティーラ』 ―演劇改革の萌芽」では、この台本の分析を通して、ゴルドーニが本作で新たな演劇改革の理念を実現しようとしていたことを検証した。これにより従来その改革について論じられてきた喜劇の分野のみならず、歴史主題のオペラの伝統の中でも、ゴルドーニが改革を試みていたことが分かった。昨年度末に上梓した『啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの場合』に関連して、3つの研究会で発表を行ったが、特に「ゴルドーニの作劇における歴史資料の活用について」の発表でイタリア史研究者と、「フランス演劇とゴルドーニ」の発表でフランス研究者と交わした質疑応答を通して、ゴルドーニにおける伝統と革新について、歴史や比較文化の視点から捉え直すことができた。さらに『住所まちがい』公演パンフレットに寄稿した「コンメディア・デッラルテとは?」、「イタリア演劇のキーワーズ」、「イタリア演劇小史」の3本の論考の執筆を通して、イタリア演劇史の伝統におけるゴルドーニの立ち位置を確認できたと同時に、彼の行った改革について振り返ることができた。また、「グルック・シンポジウム:オペラ《オルフェーオとエウリディーチェ》とその周辺」で発表「オルフェーオをめぐるテクストの変遷 ~イタリアの演劇作品とオペラ台本を例に」を行い、15世紀のポリツィアーノから18世紀のカルツァビージまで、ギリシア神話のオルフェーオ(オルペウス)を主題とする舞台作品を分析したことにより、『スタティーラ』のような歴史主題の舞台作品のみならず、神話主題の舞台作品における伝統と革新についても考えを深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年度早稲田大学オペラ/音楽劇研究所の研究会で口頭発表した「ゴルドーニ作品の異邦人の表象 ―東方を舞台とした作品を中心に」の内容を書き直したものを、7月にローマ大学で開催される国際18世紀学会にて英語により口頭発表し、その後論文化する予定である。また、6月には日本18世紀学会にて「18世紀の西洋舞台芸術における人種・身体・血」というタイトルのパネルを主催し、自身も口頭発表「ゴルドーニと被征服民 ―南米を扱った二作品を例に」を行う。国際学会での発表は、ゴルドーニにおける伝統の問題を中心にしたもの、日本18世紀学会の発表は革新的要素に焦点をあてたものになる予定であるが、この二つの発表を合わせて、ゴルドーニにおける伝統と革新の問題を再考したい。 その他、2年前に主催したシンポジウム「ギリシア悲劇主題の18世紀のオペラ ―イピゲネイア主題のオペラを起点として」の論集を編集、刊行予定である。ゴルドーニの活躍した18世紀のオペラにおける伝統と革新の問題を包括的に扱うこの論集も、ゴルドーニ研究の一端を成す。同様に伝統と革新の問題を扱った、口頭発表「オルフェーオをめぐるテクストの変遷 ~イタリアの演劇作品とオペラ台本を例に」の内容も、論文化して発表したい。
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Research Products
(13 results)