2021 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ系フランス語亡命文学における神話の研究:フォンダーヌとガリを中心に
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20K00494
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60507359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォンダーヌ / ロマン・ガリ |
Outline of Annual Research Achievements |
バンジャマン・フォンダーヌ研究については、フランスの学術誌に論文 "Benjamin Fondane en quatre langues" を掲載した(La Revue des lettres modernes : Les Conrad francais. Ecrivains, etrangers, francais (1918-1947), Classiques Garnier, 2021)フォンダーヌにおけるイディッシュ語、ルーマニア語、フランス語、スペイン語の使用が、フォンダーヌの「横断者」としての資質とも密接な関係をもっていたことを、豊富な資料をもとに論証した。 フォンダーヌとボードレールについては、日本フランス語フランス文学会東北支部大会(2021年11月27日、オンライン)のシンポジウム「ボードレールの《世界性》」において、「フォンダーヌとボードレール」と題する研究発表を行い、日本フランス語フランス文学会東北支部会報『Nord-Est』第15号(2022年4月)に同発表の報告を掲載した。また、詩誌『びーぐる』第53号(2021年10月)に「フォンダーヌから見たボードレール」を掲載した。二つの論考はともに、ルーマニア時代からパリ時代に至るフォンダーヌの詩作品におけるボードレールの影響と、彼の詩論におけるボードレール理解を検証したものである。 ロマン・ガリについての論考を発表することはできなかったが、「日本の学生が選ぶゴンクール賞」運営委員として、ガリの履歴と重なる時代を対象としたソルジュ・シャランドンの小説『ろくでなしの子ども』の紹介記事を雑誌『ふらんす』2022年2月号(白水社)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費で購入した資料をもとに論文を発表し、研究を進めることができた。特にLes Lettres modernes への掲載は、2019年度のサバティカル研修で培ったフランス人研究者との研究ネットワークの成果と言えるもので、研究の国際的展開を推進することができた。その一方で、2020年度に引き続き、コロナウイルス感染症対策のため、海外渡航が制限されるなか、パリ、ヤシ、ヴィリニュスなどでの文献調査を実施することができなかったことは、当初予定していた研究計画に対して、遅れが生じている部分である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度もフランスおよびルーマニアの研究者と連携し、資料の読解を中心に研究を推進する。感染症対策の趨勢によるが、移動の安全が確保される状況になれば、上述の3都市(パリ、ヤシ、ヴィリニュス)での文献調査を実施し、可能であれば、現地の研究者等との交流を図り、今後の研究に必要な情報を入手するように努める。ただし、ヤシ(ルーマニア)とヴィリニュス(リトアニア)は、ウクライナと国境を接し、2022年4月以後、戦争の影響をどれくらい受けるかも不確定であり、この点にも注意を払いながら、渡航可能な条件を見極めたい。
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Causes of Carryover |
研究計画の予算計上において大部分を占めていた海外における文献調査の実行が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2021年度も困難であったため、その一部は書籍購入費に切り替えたが、残額が生じた。今年度の海外出張についても、まだ不確定な要素が多いものの、年度後半における海外での調査を見込み、前年度分の残額を旅費に充てる予定である。
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