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2021 Fiscal Year Research-status Report

ベストセラーから見たナチス・ドイツの文学空間

Research Project

Project/Area Number 20K00500
Research InstitutionKagoshima University

Principal Investigator

竹岡 健一  鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (30216874)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsナチス時代 / 第三帝国 / ドイツ文学 / ベストセラー / 文学空間 / 文学受容
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、本の刊行数に基づいてナチス時代のベストセラーを突きとめ、それらを詳しく考察することにより、当時のドイツに自由で多様な文学受容の余地があったことを明らかにすることにある。令和3年度には、研究計画に基づいて研究を進め、次のような成果を得た。
(1)予備的研究と前年度に行ったベストセラー上位100タイトルの選定結果を踏まえ、「綱領的・宣伝的著作」、「血と土の文学」、「戦争文学」というナチス的な文学の3つのジャンルと「翻訳文学」について、全体的な特色を分析するとともに、代表作品を詳しく考察した。その結果、ベストセラーにナチス的な文学が占める割合が少ない、ナチス的な文学の中に大衆的な著作や反戦小説が含まれている、英・米・仏の作品を含む外国文学が多くの受容を見ているといった、ナチスの保守的・民族主義的イデオロギーとは矛盾する傾向が明らかにされた。
(2)ナチス的な文学のうち従来あまり目が向けられてこなかった2つの著作、『アードルフ・ヒトラー 総統の人生の写真』(1936年)と『国防軍のためのリクエスト音楽会を始めます』(1940年)について、より詳しい考察を行った。その結果、コレクタブルカードとそのアルバムという一見取るに足らない大衆的な印刷媒体がきわめて国家主義的な機能を果たしたことや、戦時中の娯楽的著作がラジオや映画との相乗作用によって民族共同体的公共圏を形成したという、興味深い結果が得られた。
これらのうち、(2)については、次年度中に口頭発表と印刷発表を行う予定である。
なお、今年度予定していたドイツ国立図書館での資料収集とライプツィヒ大学書籍学研究所での研究動向調査については、新型コロナウイルスの影響により断念せざるを得なかった。これについては、渡航制限が解除され次第、次年度の早い時期により充実した形で実施できるよう、準備を整えて行く。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

次の3つの理由から、おおむね順調に進展していると判断した。
(1)ナチス時代のベストセラーの上位100タイトルの選定と内容的なジャンル分けに沿って、予定していた9つのジャンルのうち6つのジャンルの考察を終え、その成果の一部について口頭発表と印刷発表を行った。
(2)ナチス的な著作の特殊性を解明する上で、従来あまり目が向けられてこなかった2つの著作、『アードルフ・ヒトラー 総統の人生の写真』(1936年)と『国防軍のためのリクエスト音楽会を始めます』(1940年)について詳しい考察を行い、次年度中にその成果を口頭発表・印刷発表する準備を整えることができた。
(3)上記の2つの著作の考察において、コレクタブルカードとそのアルバムという一見取るに足らない大衆的な印刷媒体がきわめて国家主義的な機能を果たしたことや、戦時中の娯楽的著作がラジオや映画との相乗作用によって民族共同体的公共圏を形成したという興味深い結果が得られ、今後の研究を進める上で有益な新しい視点を獲得することができた。

Strategy for Future Research Activity

1. 令和4年度前半には、残る3つのジャンルである「娯楽文学」、「ユーモア文学」、「古典的名作」について、全体的な特色を分析するとともに、代表作品を取り上げて詳しく考察する。また、ライプツィヒのドイツ国立図書館での資料収集とライプツィヒ大学書籍学研究所での研究動向調査を実施する。最終的に渡航ができない場合には、国内において可能な限りの調査・収集を行う。
2. 令和4年度後半には、各ジャンルの考察を総合し、ナチス時代の文学の特色を明らかにした上で、研究成果の総括を行う。予備的研究で得られている仮説を考慮しながらも、本研究で得られた新たな知見に基づいて十分検討した上で、最終的な結論を導く。
3. 最後に、本研究全体の成果を総括する報告書を作成し、配布するとともに、ホームページを通じて広く公開する。

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルスの影響と同時に、より充実した調査・収集を行うために準備期間を延長する必要から、ドイツへの渡航を延期したため、次年度使用額が生じた。
仕様計画:ライプツィヒのドイツ国立図書館での資料収集とライプツィヒ大学書籍学研究所での研究動向調査に充てる予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2021 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 『ミツバチ・マーヤの冒険』における「ミツバチとスズメバチの戦い」について―― 戦争とベストセラーのかかわりに関する一考察2021

    • Author(s)
      竹岡 健一
    • Journal Title

      「かいろす」の会『かいろす』

      Volume: 59 Pages: 1-18

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 『ミツバチ・マーヤの冒険』における「ミツバチとスズメバチの戦い」について―― 戦争とベストセラーのかかわりに関する一考察2021

    • Author(s)
      竹岡 健一
    • Organizer
      日本独文学会
  • [Remarks] researchmap研究ブログ

    • URL

      https://researchmap.jp/k_takeoka/research_blogs

URL: 

Published: 2022-12-28  

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