2021 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点から見た19世紀フランス文学とモード、美術との相関性
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20K00501
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
村田 京子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (60229987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 19世紀フランス文学 / ジェンダー / モード / 美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的(「19世紀フランス文学とモード、および当時のモードやジェンダー観を反映した美術作品との相関性を、小説構造や小説美学と密接に関連させて分析する」)に基づき、まず、バルザックの『幻滅』を取り上げて論文にまとめた。本論文では19世紀当時の服装のモードや、バルザック自身のエレガンスの概念を軸に、登場人物の服装を通して『幻滅』の物語を読み解いた。第1章では、パリと地方の対比のもと、地方貴族の服がパリのエレガンスといかにかけ離れているか、その奇妙さと滑稽さを浮き彫りにした。また、地方の貴族女性がエレガントなパリ女性に変貌していく過程を辿り、エレガンスの本質を考察した。第2章では、地方の青年がパリでダンディに変貌していく過程を、その服装の変化を通して分析し、彼の挫折の原因を探ると同時に、バルザックのダンディ像を明らかにした。 次に、バルザックの『骨董室』『カディニャン公妃の秘密』を取り上げ、「モードの女王」として登場するモーフリニューズ公爵夫人が、服装の記号を駆使して自分のなりたい女性に変貌し、さらに言葉を駆使して「新しい自己」を作り上げる過程を探り、バルザック研究会で発表した。発表原稿をもとに次年度に論文としてまとめる予定である。 また、「19世紀フランスとジェンダー」というタイトルで、京大仏文総会で特別講演を行い、19世紀フランス文学(バルザック、サンド、ゾラの作品など)を絵画や図版を使いながら、モードやジェンダーの視点から分析した成果を発表した。 上記の研究において、19世紀当時のモード雑誌の図版や、小説の挿絵、当時のモードを反映した絵画などを参照することで、美術と小説の相関性を明らかにすることができ、さらにジェンダーの視点から考察することで新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、バルザックの『幻滅』に絞って、モードや美術との関連をジェンダーの視点から探る計画であったが、時間に余裕ができたので、さらに引き続き、バルザック作品(『骨董室』『カディニャン公妃の秘密』)を取り上げて研究発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、19世紀後半のフランスにおいて大衆消費社会を推進したデパートを描いたゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』を取り上げる。豪華な生地や既製服を豊富に扱うデパートがいかに女性を搾取していくのかを、ジェンダーの視点から分析する。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定されていた国際シンポジウム(パリ開催)がコロナ禍で2021年度に延期され、口頭発表のために渡仏予定であったが、コロナ禍でオンライン開催に変わり、旅費を使うことがなかった。国内での学会もすべてオンライン開催になり、国内旅費も使わなかった。2022年度は、国内の学会、シンポジウム等に積極的に参加する予定で、フランスにも資料収集に行く予定のため、その旅費に当てたい。
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