2022 Fiscal Year Research-status Report
シュルレアリスムの国際化における日本の事例ー脱エクゾチスムの解明ー
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20K00504
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永井 敦子 上智大学, 文学部, 教授 (50217949)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モダニズム / シュルレアリスム / 近現代詩 / エグゾチスム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022(令和4)年度も、特に上半期はコロナ禍による他大学図書館、美術館図書・資料室など学外施設の利用制限や渡航に関する制限により、資料収集に関する困難が続いたものの、徐々に調査活動ができるようになった。しかしながらフランスでは政府の年金改革案に関する抗議行動期間が滞在期間に重なり、鉄道や図書館等の施設利用ができず、予定していた調査が不可能になるなど、予定通りの調査がかなわない面があった。 今年度は特に下の2点について研究を進めた。 本研究の中心的課題のひとつである日本のシュルレアリスムの「脱エグゾチスム」に関しては、米倉壽仁の創作活動、特に詩と評論における日本的なものの取り入れとその方法、この問題に関する米倉自身の逡巡とその意味を分析し、彼が日本的なものを取り入れつつも、いかに「エグゾチスム」や国粋主義的感情と距離を置こうとしていたかを示した。 同じく本研究の中心的課題のひとつである1925年から1945年を中心とした日本のシュルレアリスム詩のフランス語訳アンソロジーについては、一部の作品の翻訳・出版に関わる権利問題の解決に予想を超える時間と労力を要したものの、最終的には規則にかなった解決をはかり、出版することができた。内容については、個人的に感想や意見をいただいているほか、フランス滞在中にパリ、リモージュ、サン=シルク・ラポピの3箇所で日本のシュルレアリスム詩に関する講演会を開催し、参加者との質疑応答などを通して、意見をいただくことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により国内の学外施設(他大学の図書館や美術館の図書・資料室など)に利用制限があったことや、海外渡航制限があったこと、さらにフランス滞在中に起きた年金改革反対のストライキのせいで鉄道や図書館などが利用できなかったことで、研究者や研究テーマの関係者との面会や、資料収集が不可能になったため、研究活動に遅れが生じた。 しかしながら、上のような事態を考慮して予め検討していたように、利用可能な外部図書館で不足を補うことや資料を購入することで、特に日本国内の資料に関してはかなり不足を補うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に進めた研究の事例を増やし、日本のシュルレアリスムの全貌をなるべく視野に収めた上で、「脱エグゾチスム」の問題に関する結論を導き出す。具体的には江間章子についての研究をさらに進めるほか、第二次世界大戦後の岡本太郎の日本文化に関する著作などまで、研究対象を拡げたい。 また海外、特にシュルレアリスム活動の中心地であったフランスへの日本のシュルレアリスムの紹介については、出版したフランス語アンソロジーを利用すると同時に、絵画作品も対象に含めて継続的に行い、シュルレアリスムの国際化の一事例としての日本のケースの全貌を示すことを目指す。特に2024年はアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表して100年目にあたり、関連する研究活動が予定されているので、そうした研究のなかに日本におけるシュルレアリスムの導入の紹介も含められるよう、研究交流もより積極的に行いたい。
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Causes of Carryover |
2020年度以来コロナ禍による出国制限により、海外渡航が不可能であったため、支出が予定より少なかったため。 2023年度に関しては、22年度に出版した日本のシュルレアリスム詩アンソロジーの紹介と、関連する主題に関する調査と研究発表をフランスで行うために、助成金を使用させていただきたい。
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