2022 Fiscal Year Research-status Report
Recherches genetiques de l'oeuvre de Flaubert - femme fatale et fatalite dans les premiers romans de Flaubert
Project/Area Number |
20K00510
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
大鐘 敦子 関東学院大学, 法学部, 教授 (50350541)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フローベール / 草稿研究 / ファム・ファタル / 聖アントワーヌの誘惑 / 十一月 / ファタリテ / 宿命感 |
Outline of Annual Research Achievements |
三年目となる本年度も引き続き、パンデミックのために例年実施してきた海外での長期間の草稿調査を履行できず、国内での作業を中心としたが、12月に、中期作品『十一月』の未公開草稿について、現地で特別閲覧許可を取り、短時間ではあるが一般公開前に特別閲覧し、調査をすることができた。研究実績は以下となる。 1)『聖アントワーヌの誘惑』第一版から第二版と当時の裁判問題について海外での生誕200周年記念論集Flaubert et Scandaleに論文を発表し、2023年3月の立教大学での国際シンポジウム『ロマン主義と第二帝政期の文学』(企画:菅谷憲興、鈴木啓二他)における口頭発表では、中期作品『十一月』における告白のテーマからフィクションへの移行の問題を取り上げた。 2)科研費招聘事業としては、エリック・ル・カルヴェズ教授(米国アトランタ大学)を招き、京都大学人文学研究科(共催)で『旅人フローベール』と題した講演会を司会、討議し、フローベールにおける旅と旅行記について俯瞰的な展望と諸作品の関係を捉えた。また大阪大学で開催された日本フランス語フランス文学会特別講演(共催)で司会を務め、2015年にオークションに競売にかけられた長編小説『感情教育』の一群の未公開シナリオに関する講演会を通じて、中期作品との関係の考察を深めることができた。 3) 「ファム・ファタル」研究の成果としては、クチウク=ハーネムをめぐる論考を中心にサロメ像を探求したベルトラン・マルシャル著『サロメー詩と散文のはざまに』(水声社、共訳原大地)を3年かけて完成した。昨年出版した校訂版について、Oxford University PressのFrench StudiesからMary Orr女史の、LITTERAでは新プレイアッド版を編纂したJacques Neefs元所長の書評が掲載され、高く評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象の一つである中期作品『十一月』の未公開草稿は、2022年11月のオークションで競売されたので、12月に出張して現地で特別閲覧許可を取り、短時間であるが一般公開前に特別閲覧し、ようやく調査を開始することができた。そのため、研究期間を一年延長する予定である。 また、『狂人の手記』の校訂作業も進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ようやく公開され、特別閲覧許可がおりた中期作品『十一月』の草稿を出張して調査するとともに、他作品との関係についても分析を進め、論考を発表する予定である。 ファム・ファタルに関しては、ベルトラン・マルシャルとの意見交換を進め、新しい問題提起を検討する。本年はワイルドの『サロメ』出版130周年であるため、サロメのダンスについて新しい観点から草稿を捉え直すこととする。 また初期・中期作品から後期作品に受け継がれた文体やテーマについて検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度もまだパンデミックが完全収束に至らず、長期での調査のための海外出張ができなかったため、今年は、海外国際シンポジウム参加のための旅費とする。またファム・ファタル神話の研究を深めるため、招聘事業をする場合に、同時通訳などの講演会実施費用に当てる予定である。
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