2023 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦後のシュルレアリスムにおけるハイチの影響
Project/Area Number |
20K00512
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
長谷川 晶子 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (20633291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シュルレアリスム / ハイチ / アンドレ・ブルトン / エクトル・イポリット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヨーロッパの芸術運動であるシュルレアリスムが、ハイチにおける民間宗教や人々の生活と深く結びついた芸術のあり方にヒントを得て、第二次世界大戦後の活動を展開させたという仮説を証明することである。そのため、初年度の2020年度は、ハイチを訪れたシュルレアリスムの文学者と画家がハイチの芸術と宗教をどのように受けとめ、どのように理解したのかを解明する調査を行うことから始めた。 第二年度には、これまでに研究がほとんどされていないハイチの画家エクトル・イポリットに関する調査を開始した。先行研究を通して、イポリットの創作活動や人生の詳細について確実な情報を得ることができた。シュルレアリスム運動の理論的指導者であるブルトンにとって、この時期、イポリットが特別な存在であり、この当時のブルトンに新しい世界の見え方を教えてくれる貴重な存在であった可能性が高いことが明らかになった。この研究の成果は2024年秋に国際学会で発表する予定である(「アンドレ・ブルトンとエクトル・イポリット」)。 第三年度の2022年には、第二次世界大戦中に、イポリットや素朴派を「プリミティヴ」として評価するようになったニューヨークの美術界について調査を行なった。特にニューヨークで活動していたシュルレアリストたちのなかで、いわゆる「素朴派」に対する関心が急激に高まったことに注目した。 最終年度には、第二次世界大戦中のアメリカでハイチの美術がどのように受容されていたのかを調査した。同時に、第二次世界大戦後におけるヨーロッパの芸術の潮流における「原始的なもの」「素朴なもの」に関する調査を進めた。特にこの時代、シュルレアリスムとも関係のあった前衛芸術CoBrAにおけるこの関心を明らかにしながら、シュルレアリスムの考えを相対的な視点から再考し、「コブラとシュルレアリスム」という題名の論文でまとめた(2023年12月)。
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