2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K00513
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 知子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (60625466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀フランス文学における「幻」の描かれ方を、主に写実主義文学を通して分析し、「幻」という非科学の領域にかかわる事象が、科学を礎石とする写実主義文学において反復されるというその逆説性に注目し、具体例を通して問題の表れを明らかにした。また夢や想像力を重視するロマン主義時代の作品における「幻」や、科学性を指向した自然主義時代の作品における「幻」の描出と比較することにより、「幻」という視覚にかかわる主題がことばによってどのように表されているかについて、文学潮流の相違点およびその背後にある思想状況を文献学的に検証した。 19世紀文学における「幻」は、「幻覚」「錯覚」「幻影」など、様々な語によって描かれてきた。と同時に、そうした語を用いることなく心の中に思い描かれる像や心象を描いている作品も多く見受けられる。これは視覚芸術が普及する社会背景にも関連している。さらには科学史に起こったパラダイムシフトを全面的に考慮に入れることもこころみた。本研究ではそうした記号表現や記号内容における差異の具体例や多様性を、作品分析によって分析した。 実施した研究は、全期間にわたって、フランス語論文にまとめる形で研究成果とした。フロベールなど写実主義文学と、その後にくる自然主義文学・象徴主義文学の差異を分析するのみならず、同じ主題を扱っているロマン主義時代の作品も射程に入れることで、より明確な見取り図を提供し、「幻」の描出の時代性と普遍性を考察した。
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Research Products
(1 results)