2021 Fiscal Year Research-status Report
Focusing on Choi Seung-hee's strategy of dance performance and Japanese cultural diplomacy in the West
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20K00514
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
Lee HyunJun 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (40708369)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Sai Shoki / 1930年代のアメリカのモダン・ダンス / 戦前の文化政策 / 戦前のニューヨークの舞踊界 / 「オリエント」 / 秋田と崔承喜 / 石井漠 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は、日本の国内及びアメリカにおけるフィールドワークを実施し、多数の貴重な資料を発見したことである。まず、国内調査は、崔承喜の師匠である石井漠の故郷秋田県におけるフィールドワークを実施した。秋田県立図書館をはじめ、秋田県公文書館、秋田県立博物館、民族芸能資料センターなどで、現地調査を行い、戦前の崔承喜の資料を8点、石井漠資料5点、石井漠門下生資料数点を発見することができた。 次に国外調査では、昨年に引き続き、アメリカの各機関のアーカイブ調査を参考にしながら、現地でのフィールドワークを実施した。場所はNew YorkとWashington D.C.の2ヵ所である。その成果として、1930年年代における崔承喜に関わる当時の資料(報道記事、写真、公演のパンフレットを含む広告資料、NYの興行社、実際公演したBroadwayの劇場の調査等)を多く見つけることができた。今回見つかった資料には、初めて発見した内容がかなり含まれており、崔承喜研究者はもちろんだが、戦前の舞踊界や日本の海外文化政策を研究する人にも、一次資料として大いに参考になると考える。また今回のフィールドワークで最も大きな成果は、崔承喜資料の所蔵先を把握したことである。崔に関する主な資料は、New York Public LibraryやBroadwayをはじめとするNew York所在の劇場、それから議会図書館(Washington D.C)に散在していることが分かった。最後に今回の調査を通してNYPLの司書や議会図書館のアジアパートの研究員との人的交流ができたのも大きな成果の一つである。特に議会図書館の研究員に勧められ、拙著の『「東洋」を踊る崔承喜』(勉誠出版、2019)を当図書館に寄贈することができたのは、研究者として非常に名誉なことであり、日本の崔承喜研究をより広めることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題はアメリカ現地での資料発掘を中心としたフィールドワークを前提にして組み立てていた。しかし、研究初年度及び次年度において、周知のコロナ感染症拡大により、フィールドワークができない状況が2年以上も続いた。そのため、その間は日本の国内で可能な資料調査や、アクセス可能のアメリカのデータベース(文献や新聞アーカイブなど)を中心に研究を進めてきていた。しかし、アメリカのデータベース調査は、実際のところ、未公開や記入漏れや確認が難しい内容など、HP上において全体的な把握が非常に困難でかつ限界があった。その中で今年度からようやくフィールドワークを再開することができたが、しかしながらアメリカの場合は、直接該当の図書館の担当者に事前にアポイントメントを取り、一つずつ具体的に相談しながら資料にアクセスする必要があったため、予想よりはるかに時間がかかった。そして、コロナ感染状況下で、図書館の入館時間の制限があったため、非常に厳しい状況の中で調査を実施することとなった。特にNew Yorkにおけるフィールドワークはいずれの図書館や図書室、また資料館がすべて現在アポイントメント制になっており、探す資料の事前相談、請求、そして直接見るまでの流れにかなり時間がかかった。そのため、希望したすべての資料は、約2週間の滞在時間では見ることが出来なかった。これは次年度の課題とし、今年度は入手可能な資料のみを収集したため、所期の目的より少々資料収集に遅れが生じている。 さらにコロナ感染症の終局が未だに目途が立たない状況のため、今年度に「崔承喜資料展示会」の実現のための企画が取りやめとなった。そのため、去年から計画した研究内容に変更が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は1年間調査した内容や、2022年3月に行われたアメリカフィールドワークを通して集められた資料の解読を進める。課題研究が3か年に差し掛かっており、今年度は主にこれまで集められた資料をまとめる計画である。また、まとめた資料を所属大学の紀要に論文の形として投稿する予定である。 また、この2022年3月に実行したアメリカフィールドワーク時に入手できなかった資料は、来年度の長期休みを利用して、残りの調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大や鎮静が進まない理由で海外調査を予定通り行えなかったたためである。研究計画書の計画当初の実行内容までは実際は行えないのが現状である。よって、次年度は新型コロナ感染症の国内外の状況を見据えながら、再調査を行う予定である。
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