2022 Fiscal Year Research-status Report
Focusing on Choi Seung-hee's strategy of dance performance and Japanese cultural diplomacy in the West
Project/Area Number |
20K00514
|
Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
Lee HyunJun 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (40708369)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Miss Sai Shoki / ブロードウェイ劇場 / 92Y / Y.M.H.A. / New York / オリエント / Miller Theatre |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、崔承喜の世界公演戦略や、戦前期の日本の文化外交をめぐって、以下のように研究を進めた。
まず、2022年3月に行ったアメリカのNYC及びWashington, D.C.でのフィールドワークで収集した様々な資料(新聞、雑誌、文献、写真、パンフレット)の解読を進めた。そして、実際崔承喜が公演をしていたと言われているブロードウェイの劇場を調査し、その内容の一部をまとめることができた。崔承喜はアメリカ公演のために、1937年12月渡米し、翌年1月にはサンフランシスコの日本領事館で第一回目の公演を行っている。この初海外公演の実現について、当時日本や朝鮮では、すでに賛否両論があった。今回のフィールドワークでは崔承喜の世界巡演が可能になった背景に、当時ニューヨークにあった興行社(Metropolitan, Hurokの2社)の積極的なサポートが、あったことが明らかになった。しかしそれだけでなく、日本の海外宣伝のための文化政策の一環として崔承喜の舞踊活動が推し進められていたことも、大きな後押しとなっていた。
一方で、1930年代における崔承喜や、日本の文化政策について報じている、アメリカのメディアを調べを進めた。上記ので述べたように、崔承喜の舞踊公演は、最初から激しい公演反対のボイコット運動に巻き込まれてしまったのである。しかし実際アメリカのメディアが「Sai Shoki」を報じる際に、崔承喜が帝国日本の文化の宣伝塔として活躍しているということ、そして朝鮮人としての崔の立場や危機感などについては、ほぼ関心を示していないことである。今回はその全貌とまで言えないが、アメリカのメディアで売り込もうとした崔承喜のイメージと日本の文化政策を進める政府側、そして廃れていく朝鮮の文化を継承しようとする舞踊家崔承喜、これら三者はそれぞれのズレは生じていたことが明らかになってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本来研究初年度に予定していた崔承喜のアメリカ公演の実態調査を行うことが出来たため、ほぼ順調に進めることが出来た。2022年3月に約2週間集めてきた資料を夏季夏休み期間に集中的に解読し、その一部を投稿することができたのが大きな成果である。コロナ感染症による渡航制限がある中行った、アメリカフィールドワークであったが、多くの第1次資料の発見や、所蔵席が把握でき、研究者として大きな成果があった。次年度もコロナ感染 に注意しながら、パンデミック時には後回しにせざるを得なかった海外フィールドワークを次年度も進める予定である。なので、次年度の研究計画もその通り進められと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は大きくフィールドワーク及び資料読解という2つの方向で進める予定である。 第一に、今年度は昨年に引き続き、アメリカで収集した資料を読み解く予定である。同時に今年の夏季休み中に、前回アメリカで全部調査できなかった部分(メトロポリタン美術およびMoMaのアーカイブ調査、議会図書館等)、またフランスに足を延ばし、フランス国立図書館および国立シャイヨー劇場にフィールドワークを行う予定である。この2022年3月に実行したアメリカ研究調査は、当時時間制限やコロナによる様々制限によって調査できなかったのを、今年の調査ではなるべく調べ上げる予定である。 第二に、現地のフィールドワーク準備やそれを実行しながら、2022年3月に行われたアメリカフィールドワークを通して集められた資料の解読を進める。この作業は主に冬季休みに集中して行う予定であう。つまり、次年度は、主に今年度収集した資料をはじめ、次年度に計画中の夏季出張時に集められた資料を、解読しまとめる計画である。そして、これらの成果は順次に所属学会誌や所属大学の紀要に論文の形として投稿する予定である。 今年度アメリカの新聞を調べる中で、偶然にも在米日系新聞、在米朝鮮系新聞という、新たな資料の何脈を見つけることが出来たのは、大きな成果である。これらの新聞に崔承喜や日本の文化政策についての報道の全様に関しては、徐々に解読を進め、今後論文としてまとめていく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度に使用額が生じた理由は、研究計画の当初、周知の通り、パンデミックなどを念頭においておらず、研究計画書を立てていたためである。最も本研究課題は、主に資料発見につなるようにアメリカ、フランス、ドイツなどに散在している崔承喜の史料(写真、絵画、雑誌、パンフレット、新聞など)を探す、海外フィールドワークが前提となっている。それでこの2年も先送りとなったことにより、研究費執行状況にも計画書通り行うことが出来なかった理由である。 研究費の繰越金は次年度において海外調査費用として主に充て、残りは論文の執筆にかかる諸費用に充てる予定である。
|
Remarks |
・研究活動の公開(新聞掲載) 李賢晙(著)「崔承喜と小林多喜二の生きた時代」『秋田魁新報』 2023年2月14日火曜日8面 ・講演内容の報道記事 ①「秋田市で県多喜二祭 文学研究者、李賢晙さんが講演」『秋田魁新報』2023年2月26日朝刊、②「舞踏家・崔承喜とはー多喜二記念の集い李教授が講演」『北鹿新聞』2023年2月27日(月)
|
Research Products
(4 results)