2021 Fiscal Year Research-status Report
『ローランの歌』と日本近現代:西洋文化受容と自文化アイデンティティ構築
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20K00515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70569904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 比較文学 / 仏文学・仏語圏文学 / 近・現代文学 / 異文化コミュニケーション・翻訳・通訳 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も新型コロナウィルスの流行により、海外への渡航や海外研究者との交流を行うことが困難になった。他方で、国内における調査や資料収集においては進展がみられた。 『ローランの歌』の原文からの最初の翻訳者である坂丈緒についての資料の調査を行った。これまでの蓄積を基盤としつつ、坂丈緒の翻訳観についての理解を深めることができた。さらに坂丈緒によって訳された『ロオランの歌:回教戦争』が収録された「世界戦争文学全集」、そしてこの叢書に深く関わっていた丸山熊雄やその周辺の人々についての知見を深めることができた。とくに小島威彦や仲小路彰といった思想家が「世界戦争文学全集」のコンセプトに果たした役割をこれまでよりも踏み込んだ形で明らかにすることができた。また上記の人々のイスラム文化の語り方を検証することで、『ロオランの歌:回教戦争』という書名とそこに付された解説などが、戦時プロパガンダにおけるイスラーム文化の位置づけと連動していることを示すことができた。 本年度末には、国際シンポジウムでの口頭発表を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、機会そのものが延期となってしまった。他方で上述の調査を英語による論文二本として発表することができた。現在は坂丈緒による『ロオランの歌:回教戦争』の訳文そのものの多角的な検討を進めている。この調査の成果は令和4年度中に論文として発表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同様に新型コロナウィルスの影響を受けることも多かったが、国内での移動や調査の可能性が増したことから、昨年度よりもより活発に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査により、『ローランの歌』という作品が戦後かなりの間、児童文学の題材としてかなり広く受容されていたことが分かった。これは「『ローランの歌』と日本近現代」という本研究課題の本質に関わる事実でもある。『ローランの歌』の原文からの翻訳のみではなく、こうした翻案も視野に入れることで、『ローランの歌』と日本社会の関わりをより深く理解することができると思われる。令和4年度にはこの児童文学としての『ローランの歌』についても調査を進めてみたい。
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Causes of Carryover |
本年度も新型コロナウィルスの流行により、とりわけ国外との移動や海外研究者との交流が大幅に制限された。そのために次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)