2022 Fiscal Year Research-status Report
『ローランの歌』と日本近現代:西洋文化受容と自文化アイデンティティ構築
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20K00515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70569904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 比較文学 / 仏文学・仏語圏文学 / 近・現代文学 / 異文化コミュニケーション・翻訳・通訳 / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はとくに『ローランの歌』の坂丈緒訳を調査を中心とする研究を行った。国内出張としては、種々の図書館で日本における『ローランの歌』紹介に関連するさまざまな資料を収集することができた。また初の原典からの日本語訳である坂丈緒訳『ロオランの歌:回教戦争』が出版された当時の政治状況、さらにはこの訳書が収録されていた「世界戦争文学全集」の背景にあった諸団体についての調査を進めることができた。 他方で本年度にはコロナ後初めての海外渡航を行うことができた。2月には研究課題申請時に予定していた西アフリカ訪問を行い、同地における「中世」の表象について、現地の諸大学の教員・学生らと有意義な意見交換を行うことができた。また本研究課題のこれまでの成果についての情報共有を行うことができた。 具体的な成果発表として、年度中盤には国際シンポジウムで英語による研究発表を行った。この発表では、明治から昭和までの日本における『ローランの歌』の学術的な紹介をたどりつつ、「滅びの美学」に沿った『ローランの歌』解釈が成立する流れを明らかにすることができた。また年度末には日本語による論文執筆を行った。この論考では坂丈緒訳『ロオランの歌:回教戦争』における造語・既存の語の応用の分析を行い、訳者である坂丈緒が中世フランスの社会を日本語で表現する上で行った工夫を詳細に分析した。また彼が作り上げた訳語がどの程度までその後の佐藤輝夫や有永弘人による日本語訳に継承されたかを明らかにし、坂丈緒訳の寄与を従来よりも具体的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの状況が落ち着き国内・海外出張がより容易になった。そのため、研究のインプット・アウトプットにおいてコロナ前のようなペースを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中に予定していた『ローランの歌』の児童向け翻案についての調査を進めており、その成果を2023年度中に発表する予定である。児童向け翻案は日本における同作品の受容のいわば終着点とも位置づけられるため、最終年度の成果発表としてふさわしいと考えられる。
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Causes of Carryover |
先の研究課題をコロナの影響で延長したことの結果として、当初予定の最終年度である本年度にも予算の余剰が生じた。本研究課題はすでに2023年度まで延長することが認められており、残りの予算も2023年度中に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)