2021 Fiscal Year Research-status Report
中国語圏文学におけるディアスポラおよび知日に関する研究
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20K00530
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
張 欣 法政大学, 経済学部, 教授 (40424767)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
中国語圏の文学について考える際、ディアスポラは大きなテーマである。2019年上梓した拙著『越境・離散・女性――境にさまよう中国語圏文学』ではディアスポラの視点で張愛玲の作品を論じている。令和2年度と3年度は引き続きディアスポラの張愛玲研究を進め、新たに張愛玲論を執筆した(「四度転身」『書城』、2020年12月;「末炉香,小団円」は投稿中)。日本華文女性作家協会にて「張愛玲の四度転身」というテーマで講演した(2020年11月28日)。また、詩人でポスト構造主義研究者の鄭敏(1920-2022)について、その「海帰派」(海外留学帰国組)作家の精神の遍歴を考察した、「那一分鐘ni是和諧的」を書き、『書城』雑誌2022年5月に掲載された。近年津島佑子の「笑いオオカミ」「あまりに野蛮な」や太田治子の「明るい方へ」などが中国語圏で翻訳され、台湾や中国大陸で読まれるようになる。数年前の魯迅と太宰治の影響研究の延長として、「知日」研究の一環として津島佑子と太田治子について研究し、「太宰治的両個作家女児」を執筆した(『書城』雑誌2021年11月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡米後の張愛玲が1960年代末までずっと英語で創作し続けたが,この世を去るまでThe Rouge of the Northなど主な英語作品はいずれもアメリカで出版できなかった。 1970年代に入り, 張愛玲は英語での創作を諦め,中国語の世界に回帰し、心の拠りである『紅楼夢』の研究にも多大な労力を傾けた。2020年発表した「四度転身」(『書城』、2020年12月)は張愛玲が中国語と英語の間での四回の変換をまとめ、張愛玲の文学的ないし文化的アイデンティティを取り上げた。2020年台北の皇冠出版社が『張愛玲往来書信集1、紙短情長』および『張愛玲往来書信集2、書不尽言』を出版し、その中の張愛玲と宋淇夫婦の三人の文通は張愛玲研究に新しい資料を提供した。ここ数年、台北聯経出版社は『夏志清夏済安書信集』を五冊出版した。同時代の五人の知識人の手紙を解読することにより、張愛玲研究の新しい可能性も見えてきた。令和3年度は張愛玲の長編小説としての「小団圓」および幻の長編エッセイとしての「小団圓」の関連について考察し、「末炉香,小団円」を執筆した。また、詩人でポスト構造主義研究者の鄭敏(1920-2022)について、その「海帰派」(海外留学帰国組)作家の精神の遍歴を考察した、「那一分鐘ni是和諧的」を執筆した。「知日」研究の一環として津島佑子と太田治子についても研究し、「太宰治的両個作家女児」を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
南カリフォルニア大学やメリーランド大学等に保存されている張愛玲関連資料を調べ、ディアスポラの視点で張愛玲研究を続ける。周作人以来最も重要な知日派随筆家と評価される李長声の日本論を整理し、それを黄尊憲や周作人、それから李嘉、司馬桑敦、崔萬秋ら台湾知日派作家の系譜に入れて歴史的に捉えてみたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で海外出張ができなかったので次年度使用額が生じた。翌年度助成金と合わせて海外出張に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)