2021 Fiscal Year Research-status Report
最小探査とラベル付けに基づく文法格の比較統語論研究
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20K00535
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 真彦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (30709209)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格 / 移動 / かき混ぜ / 一致 / 反局所性 / 最小探査 / ラベル付け / 文法格 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き日本語の目的語移動を分析し、その理論的帰結を追求した。昨年度は、目的語の作用域の振る舞いに原理的な説明を与えるために、以下の2つの提案を行った:(A)(日本語では) CP フェイズが完成したのちにvPフェイズ が転送される (Saito 2017)、(B)スクランブリングや名詞句移動は反局所性 (Abels 2003) に従う。今年度は、上記の分析に基づいて、主格名詞句が反局所性の違反を伴うような移動を一見している事例を考察した。考察の結果、当該事例では、主格名詞句が動詞句 (VP) 内から時制句 (TP) 領域へは移動をしておらず、時制句領域に基底生成されて動詞句内の pro を束縛している (cf. Saito 1982)と主張した。この主張は以下の事例から支持される。まず、(1)当該主格名詞句が、pro の代わりに、顕在化された代名詞を束縛できる場合がある (cf. Takano 2003)。次に、(2)当該主格名詞句は、可能述語よりも広い作用域しか取ることができない。さらに、(3)当該主格名詞句は、動詞句内に留まる道具格主語 (Kishimoto 2010) に後続できない。また、(4)当該主格名詞句は、通常目的語に添加される「のこと」の添加を受けられない。これらの事実は、当該主格名詞句が目的語として動詞句内から時制句 (TP) 領域へ移動するという仮定に基づいては、説明が困難である。昨年度の分析の結果を踏まえ、いわゆる「主格目的語」と呼ばれてきた主格句は、動詞句内に基底生成されて時制句領域へ移動するものと、時制句領域に基底生成されるもの、以上2種類に分類する必要があるということが結論付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の校務が、当初の想定よりも多かったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を学会や研究会で報告し、評価を受ける。その上で、雑誌論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
予定された学会参加を取りやめたため、次年度使用額が生じた。令和4年度は、学会の参加や論文の英文構成などを行う予定である。
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