2022 Fiscal Year Annual Research Report
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20K00543
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 亜希子 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (60403466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイスランド語 / 主格目的語 / 一致 / 人称-格制約 / 分詞一致 / フランス語 / イタリア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究成果:アイスランド語における「一致の非対称」を研究し,2022年度に論文として発表した。論文の概要は以下のとおりである。アイスランド語のSVO文ではSが主格,Oが対格をとり,VはSと一致するのが無標である。しかしSが与格,Oが主格のときにかぎっては,VがOとの一致を示すことができる。このV-Oの一致にはさまざまな制約がある。本稿では,(i)与格Sが随意的に弱い(optionally weak)格句KPであること,(ii) 主格Oが人称素性をもつときはその認可のために与格Sが主語位置から外置されること,を主張し,これらを用いることで与格-主格構文におけるさまざまな一致の制約や方言差が説明できることを示した。 研究期間全体を通しての研究成果:2020年度からロマンス諸語における一致の非対称の研究を行い,その成果となる論文を2021年度に国際ジャーナルに発表した。先のアイスランド語の論文とも合わせて,本研究には次の意義があったと考える。「一致の非対称」=一致をコントロールする名詞が動詞に先行すれば豊かな一致が見られ,後続すれば貧しい一致が見られる,というのはどの言語にも共通する傾向である。一方で,「貧しい一致」がどのように貧しいのか(数のみの一致,性のみの一致,一致なし等のうちのどれか)については言語差があり,先行研究も原理的な説明をあきらめてしまうきらいがあった。しかし,本研究は,言語差も説明できる理論を構築した。すなわち,一致をコントロールする名詞句の構造の違いが「貧しい一致」の違いを生み出す。本研究は,言語の差は形態論にあり統語論にはないという極小主義の考えとも一致する結果となり,この点での理論的貢献もあったと考えている。
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Research Products
(2 results)