2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Research on Poverty of the Stimulus and Structural Dependence in Child Language Acquisition: From Adverbial Clause and Nominative Subject in Japanese
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20K00548
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
團迫 雅彦 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50581534)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 生成文法 / 主語 / 格 / 副詞節 / モダリティ / 刺激の貧困 / 構造依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、入力に含まれない統語範疇に言及した統語的制約が関与した現象を用いて、構造依存性に関する言語知識を子どもが有するかどうかを明らかにすることで、生成文法理論の理論的前提である「刺激の貧困」の妥当性を検証することを目的とする。これにより、従来の構造依存性の獲得研究が持つ、要素間の線形順序という統語情報を用いた類推による規則の一般化の問題を回避できる。2021年度は、新型コロナウイルスの影響が長引き、保育施設での幼児を対象にした実験の実施が非常に困難であった。したがって、感染症の影響を受けない形にするため、前年度に引き続き、以下のような研究を中心に進めた。具体的には、(1) 副詞節と主語の発話データの収集と分析、(2) 「日本語の主格主語はそれを認可するTP内に留まらなければならない」という統語的制約に着目し、TPを含むかどうかにより副詞節における主格主語の解釈が異なる文の理解実験の準備、(3) 動詞句内に音形を持つ主語と目的語の生起に関する研究の批判的検討、(4) クラウドソーシングにより被験者を集める方策の模索、(5) 幼児言語を対象にしたラベリング分析に関する検討、(6) 発話コーパスを用いた副詞節および主格主語の入力の質的・量的分析、(7) 分裂文の理解実験に関する先行研究の批判的検討、(8) 感動詞と終助詞を対象にしたデータ分析などを行った。本年度の研究の意義は言語獲得における副詞節と主語の関連性について研究を進める上で必要な準備を進めることができた点にあるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も前年度に引き続き、新型コロナウイルスによる影響を相当程度受けており、言語産出・言語理解に関する調査・実験は実施できていない。言語獲得研究、統語論研究などは進んできているものの、実験を実施できないため「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最も重要な点は、新型コロナウイルス感染を防ぎつつ、研究計画をいかに推進できるかにある。したがって、当初予定していた計画を以下のように修正して進めることにする。 (1) 調査の被験者について:クラウドソーシングにより、被験者(とその保護者)を募集し、オンライン上で実験を行う。理解実験は、実験のキャラクターが状況に合った正しいことを話したかどうかを被験者に問う真偽値判断課題(Truth Judgment Task)を採用するため、被験者には大きな負担はないように思われる。ただし、感染の状況次第では、保育施設と相談し、十分配慮を行った上で調査を行いたい。 (2) 副詞節と主格主語(あるいは「ハ」を伴う主題)の入力の頻度を、発話コーパスであるCHILDES (MacWhinney 2000) を用いて調査する。入力の質的・量的分析により、副詞節の場合に「刺激の貧困」が確率論的に成立しうるかを考察する。 (3) 子どもが自然発話として、どの時期に副詞節を産出できるようになるのかをCHILDES を用いて調査する。 (4) 分析および中間報告:SPSSなどの統計分析ソフトを利用して、コーパス調査・実験結果の分析を行い、研究成果を随時、学会や研究会などで発表する。その場でいただいたコメントおよび質問を参考にして、追加実験や今後の研究に役立てていく計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、海外や国内への出張が全くなくなり、旅費の支出がなかった。また、当初予定していた実験に対する謝金も調査自体が行えなかったため、支出がなかった。2022年度は、クラウドソーシングも活用し、調査・実験を実施し、旅費や人件費・謝金に充てることを計画している。
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