2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00550
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
平田 直子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40572475)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 『磨光韻鏡』 / 杭州方言 / 明清時代 / 呉方音 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度から『磨光韻鏡』(1744年)唐音のかな表記による字音を中古中国語の枠組みに当てはめるデータ入力作業を行ってきた。研究2年目である2021年度は、前年度の作業を継続しそれを完了させ、研究成果として発表した。『磨光韻鏡』には異体字や生僻字が多く収録されており、その入力にかなり時間がかかった。また『磨光韻鏡』各転図中に配列された字音と『方言調査字表(修訂本)』の中古中国語の音韻区分がうまく対応しない字音グループがあり、その処理や扱い方などに苦戦した。対応しない理由については、まだ解決できないままとなっている。しかし、まずは『方言調査字表』の枠組みを報告者が少し工夫を加えることで、このような問題に対応できると考え、凡例にその旨を記載し字音のデータを公表することにした。 2021年5月には、『磨光韻鏡』唐音の声母におけるいくつかの音韻特徴について、同時代の唐通事の唐音資料、中国明清代の杭州音を反映していると考えられる『諧声品字箋』(1677年)とを比較考察した研究発表を行った。またその学会発表を通して、より焦点を絞った内容にまとめ直したものを2022年5月に発表した。それは『磨光韻鏡』唐音に見られる声母の一特徴についてさらなる考察を行ったものである。『磨光韻鏡』唐音の依拠した中国語音には杭州音説があげられるが、それを裏付ける結果となった。正確に言うならばそれは杭州読書音であるという可能性に言及した。 『音韻正譌』(1644年)は安徽宣州呉語系の音韻を反映している韻書であり、先行研究も多少ある。報告者は『音韻正譌』の字音を中古中国語の枠組みに当てはめる作業に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、『磨光韻鏡』唐音の声母・韻母の体系をまとめ発表する予定を立てていたが、それよりも『磨光韻鏡』唐音の声母において興味深い一音韻特徴を発見したことから、この問題についての解明を先に行うこととした。『磨光韻鏡』唐音の全体的な音系については、2022年度に行うように変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
『磨光韻鏡』唐音の音韻体系をまとめることに加え、『諧声品字箋』の音韻体系とどの程度類似点があるのかということについて、調査・整理して発表する。 本研究は、唐音資料を使用し、中国浙北音の語音変遷をたどることを研究テーマとしていたが、唐音資料としての『磨光韻鏡』唐音の字音データ入力作業を行う過程において、『磨光韻鏡』唐音、それ自体にも不可解な点や、ユニークな音韻特徴が数多くあることがわかった。このため研究対象が主として『磨光韻鏡』唐音の音系研究に偏り、時間を多く割く結果となっているが、当時の浙北音(主に杭州音)から現代音までの変遷も、このような基礎研究を行うことでより確かな研究に結び付くと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた国内外の学会に出張できなかったことが主な理由である。 次年度においても以下のことに費用を充てる予定である。1.文献資料の購入やコピー 2.資料収集にあたっての国内出張費 3.成果物の印刷・製本
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Research Products
(3 results)