2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00552
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
中井 延美 明海大学, ホスピタリティ・ツーリズム学部, 准教授 (30406384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 名誉教授 (90051747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代用表現 / 名詞句 / 形式特性 / 意味機能 / 発話解釈 / 照応関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
代用表現(代用形)の意味解釈メカニズムについては、これまで「言語的先行文脈のどこかに代用表現に対応する先行詞が存在しているはずであり、それを同定する」というモデルが想定されてきたが、本研究は、そのようなアプローチには多くの問題があると考えることを前提にスタートした。 本研究の目的は、(i)名詞句の形式特性、(ii)文中の名詞句の意味機能、(iii) 発話解釈についての語用論メカニズム、という三つの観点から得られる知見を活用して、代用表現解釈メカニズムについて、新たな説明を試みることである。具体的に、次の三つの研究課題(問い①②③)に取り組んでいる。問い①:自由照応関係における代用表現解釈の理論的メカニズムとは/問い②:束縛照応関係における代用表現の形式特性と先行詞との関係はいかなるものか/問い③:同一対象指示関係が成立しない照応関係をいかに扱うか。初年度に続き2年目においても、代用表現に関する先行研究をさらに調べ、とくに自由照応の解釈がどこまで可能か、そこにいかなる制約があるかを、若者語などのデータも含めて幅広く、柔軟に検討した。 言語科学会(JSLS)の第22回年次国際大会(2021年6月5日・6日オンライン開催)にて、「「それな」の「それ」を解釈するための語用論的メカニズムについて」という研究発表を行った。「それな」の「それ」自体について自由照応の解釈がどこまで可能であるか、語用論的推論がどのように働くことで「それな」が適切に解釈されるのかを議論した。 また、第17回国際語用論学会(IPrA, 2021年6月27日-7月2日)では、「Interpretation of the antecedent for an N’pro-form」というテーマで、研究成果の一部を発表した。さらに、日本英語文化学会機関誌『異文化の諸相』42号にて、同成果を著述としても発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来の計画では、代用表現の解釈メカニズムを解明するために援用する意味理論・語用理論について、研究分担者との研究ミーティングおよび、国内の関連分野の研究者らとの意見交換会を定期的に実施することを計画していたが、Covid-19の問題が生じたことで、令和2年度に続き、令和3年度においても、対面で研究活動を実施することがほとんどできなかった。代りに、オンラインで意見交換する機会を数回設けることができた。 本研究の当初の予定では、代表者・分担者が国内外の学会に参加し、本研究が扱う理論的・教育的要素の両面について迅速なフィードバックを得ることを目指していたが、こちらについても同様にCovid-19の問題の影響で、学会の開催中止やオンライン開催への切り替えなどにより、なかなか思うような展開には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
先行詞が言語的文脈に明示されていない代用表現を解釈するためには、聞き手の側で言語知識ばかりでなく、言語外の知識や信念を駆使して推論していく必要があることに着目する。また、その解釈メカニズムを現代語用論モデルである関連性理論の観点から考察する。さらに、一般に、自由照応の解釈がどこまで可能か、そこにいかなる制約があるかという問題を、幅広いデータから柔軟に検討していく。併せて、日本語教育や英語教育の教材において代用表現に関わる学習要素がどのように組み込まれているかを調査し、公開されたコーパスから収集した代用表現が関与する日英語のデータをもとに、本研究から得られた知見を教育に具体的に活かす方法を考える。以上の研究成果を、国内外の学会などにおいて積極的に発表する。
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Causes of Carryover |
令和2年度~3年度は、参加を予定していた国内外の学会が、すべて中止・オンライン開催に切り替わったこと、また、緊急事態宣言下・まん延防止等重点措置での国内出張について所属機関からの許可が得られなかったことなどの理由により、旅費の支出が一切発生しなかった。令和4年度もについても現時点では、今後のコロナウイルスの問題の先行きが不透明であるため、研究会議や学会出張について確実な計画を立てることは困難であるが、状況が改善した場合は、研究成果を発信するため、可能な限り学会発表等で研究成果の発信を行いたいと考えている。 また、代用表現が関与する日英語のデータをコーパスから集積し、基礎資料づくりを継続する。その作業を効率的に行うためにプリンターを購入する(昨年度は購入しなかった)。 さらに、代用表現に関する先行研究を精査するため、日本語学をはじめ、意味理論・語用理論に関する多くの言語学関係図書が必要となる。加えて、実際の英語教育・日本語教育教材のなかで代用表現に関わる学習要素がどのように扱われているかを精査するため、英語教育関係図書・日本語教育関係図書がそれぞれ必要となる。
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