2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00552
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
中井 延美 明海大学, ホスピタリティ・ツーリズム学部, 准教授 (30406384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 名誉教授 (90051747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 代用表現 / 名詞句 / 形式特性 / 意味機能 / 発話解釈 / 照応関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に、文と文の間あるいは文中における代用表現とその先行詞との間の関係に、どのような意味論的・語用論的制約が課せられるかを、代用表現oneに焦点を当てながら、その他の代用表現であるitやsheなどとも比較しながら検討した。代用表現oneが統語論的にはNバーの代用表現であることから、代用表現oneは、その先行詞をNバーとして含む名詞句全体との関わりをもとに解釈されることになると考える。そのため、代用表現oneによって不定的な要素が同定される場合のほうが、定的な要素が同定される場合より、解釈の負荷が大きいものになると推測される。代用表現oneがいかなる表現の置き換えであるかを考える場合、音声化されない限定部も含めて飽和化させるという操作があると考える。また、代用表現は意味的に自由な変数であり、「飽和」と呼ばれる語用論的推論によって埋められなければならないスロットであること(西山 2019)を前提とし、代用表現の非明示的照応関係の解釈メカニズムを検討した。どのような場合に、非明示的照応関係が成り立ち、また、どのような場合にそれが成り立たないかという問題について、少なくとも、言語知識によって判断すると、表面的には適格文であるように見える場合でも「最適な関連性」が得られない場合は、非明示的照応関係が成り立ちづらい、ということがわかった。逆に、先行する言語的文脈に明示的な先行詞を欠いていても問題なく解釈できる場合は、先行する言語的文脈のなかに聞き手の側の知識や信念と結び付くことで、最適な関連性を実現させるだけの言語的要素と言語外の知識や信念との結びつきがあることがわかった。さらに、日本人学習者の英作文における代用形とコピュラ文に関する特徴も検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日英語のデータを公開されたコーパスから収集し、本研究の基礎資料を整備する作業が、新型コロナウイルス感染症の影響で、最初の段階で滞ってしまったため、3年目の現在においてもコーパスからのデータ収集を続けている。 一般に自由照応の解釈がどこまで可能か、そこにいかなる制約があるかという問題を関連性理論の枠組みを用いて解明する作業について、研究分担者との対面での議論が、当初の予定より少なくなってしまった。 また、いくつかの学会がオンライン開催となったため、関連分野の研究者らとの対面での議論が、当初の予定より限られたものになった。
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Strategy for Future Research Activity |
名詞句の形式特性、とりわけ、名詞句の非飽和性、素名詞句性という意味理論上の概念について、さらに、先行詞の形式特性に焦点を当てて丁寧に見直していく。 日本語教育や英語教育の教材において代用表現にかかわる学習要素がどのように組み込まれているかを精査し、これまでの研究から得られた知見を教育に具体的に活かす方法を考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、対面で開催される学会がほとんどなかったため、旅費の支出が当初より大幅に少なくなったため。
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