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2022 Fiscal Year Research-status Report

A comparative study on verbal affixes and auxiliary verbs as funtional heads in Japanese and Korean

Research Project

Project/Area Number 20K00555
Research InstitutionNanzan University

Principal Investigator

青柳 宏  南山大学, 人文学部, 教授 (60212388)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords日韓比較研究 / 機能範疇 / 適用形 / 補助動詞 / 動詞連鎖 / テ形
Outline of Annual Research Achievements

令和4年度は、これまでの日韓語の機能範疇の違いに関わる研究で残された問題を追究した。筆者はこれまで専ら被害を表す除外型受身のラレと受益の補助動詞(~テ)モラウが日本語には存在するが韓国語には存在しない事実をVoicePより高い階層に現れる適用形の存在の有無で説明してきた。しかし、(i)韓国語にも日本語の授益の補助動詞(~テ)ヤルに当たる(~e)cwuは存在し、また、(ii)除外型受身のラレと補助動詞モラウが系立的(paradigmatic)な関係を持つとすれば、前者は動詞語幹に接続し、後者のモラウはテ形に接続するという違いがある、という2つの問題が残っていた。
(i)については、日本語の(~テ)ヤルが「花子に飯を食わせてやる」「花子に漫画を読ませてやる」のように使役文を自由に埋め込めるのに対し、韓国語の(~e)cwuはmek-i(食わせる)のような使役形は埋め込めてもilk-hi(読ませる)のような使役形は埋め込めないという事実に着目し、日本語の(~テ)ヤルが上述のVoicePより高い適用形として現れる一方、韓国語の(~e)cwuは、mek-iの場合のように、与格句(花子に)と対格句(飯を)が所有権の移譲を表すVPより低い適用形(Pylkkanen 2008)によって認可される場合のみ使役形を埋め込めることから、VPとVoicePの間に現れる適用形だと結論づけた。この成果は著書1として公刊した(2022年12月)。
(ii)については、日本語の動詞連鎖V1-V2におけるテ形V1のテの性質を追究した。これまで注目されたことのない「(総裁選に)打って出る」「(忠告を)切って捨てる」のようなイディオム的な動詞連鎖にも目を向け、テは時制辞とみる(Nakatani 2013)よりもアスペクト素とみるべきだとの提案を行った。この成果は著書2として公刊予定(2023年12月)である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和4年度は、長年懸案だった問題(上記「概要」における問題(i))に加えて、新たな課題(同問題(ii))にも取り組むことができたので、課題研究はおおむね順調に進展しているといえる。
本研究課題は、言語間の差異は語彙範疇ではなく機能範疇の差異に還元できるという、いわゆるChomsky-Borer Conjectureに基づき、日韓語の違いを両言語の機能範疇の違いから解明することにある。また、文法化については、理論的立場を超えて、語彙範疇から機能範疇へ(例:授受の本動詞が補助動詞に)、または機能範疇から別の機能範疇(例:使役・受動形式が新たな機能を獲得)へという方向性が認められている(Roberts & Roussou 2003, Haspelmath 2004, Traugott 2010)。
前年度までに、(a)韓国語で使役形と受動形が形態的に同形でありうるのはなぜか、(b)韓国語の使役接辞{-i, -hi, -li, -ki, -wu, -kwu, -chwu}のうち母音が/i/の前4者のみが受動も表しうるのか、(c)韓国語にも受動文は存在するが、「太郎は花子に泣かれた」のような除外型受動(Washio 1993)が存在しないのはなぜか、(d)韓国語にもモラウに当たる本動詞は存在するのに「太郎は花子に働いてもらった」のような受益の補助動詞の用法が未発達(Shibatani 1994)なのはなぜか、という問に答えてきた(Aoyagi 2007, 2010, 2019, 2021)。
これに加えて、今年度は上記(i)、(ii)の課題に取り組んだ。
これら一連の研究で明らかになったことは、現代韓国語ソウル方言においては、外項を導入するVoiceより高い位置に現れる機能範疇が著しく制限されており、その文法化の程度は日本語より琉球語に似ているという興味深い事実である。

Strategy for Future Research Activity

令和5年度以降は、前年度までの研究成果を踏まえ、なぜ現代韓国語ソウル方言が、日本語に比べて文法化の程度が低いのか、あるいは、そのようにみえるのかを追究したい。
より具体的には、現代ソウル方言では、一つの語幹に下接可能な使役・受動接辞は一つに限られるといわれるが、慶尚道方言などでは二重接辞も認められ、また、現代ソウル方言においてさえ、つぶさに観察すれば二重接辞の痕跡が認められる。さらに、Ito (2021)の慶尚北道方言の使役接辞の研究によれば、単純接辞がより直接的な使役もしくは他動性を表し、二重接辞は間接的な使役を表し、後者が受動の素ではないかと述べている。Itoは二重接辞の単純化・一重化を音韻的な縮約と分析しているが、使役接辞が文法化した機能範疇だとすると、むしろ構造的縮約が音韻的縮約を引き起こした可能性が高い。すなわち、韓国語にも日本語に近い水準で使役化が進んだ時期があったものの、その後中央語(ソウル方言)で構造的縮約が進んだため、現在では基本的に一語幹に一接辞だけが認められ、さらに、使役と受動で解釈が曖昧な形式を生む結果になったのではないかとの仮説が成り立つ。
現時点で文法化の進度が類似している琉球語との比較も視野に入れながら、この仮説を検証するのが今後の課題である。

Causes of Carryover

令和4年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた国際学会への参加や韓国(慶尚道、済州島)における現地調査が事実上不可能になった。令和5年度は、5月8日以降新型コロナウイルス感染症が感染症法上5類相当に引き下げられ、海外渡航が容易になるので、研究成果発表と意見交換のために国際学会に参加し、あるいは、韓国における現地調査を行うために旅費として執行する予定である。

  • Research Products

    (7 results)

All 2023 2022 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Book (2 results) Remarks (3 results)

  • [Journal Article] A comparative study on verbal affixes and auxiliary verbs as functional heads in Japanese and Korean2023

    • Author(s)
      Aoyagi Hiroshi
    • Journal Title

      Impact

      Volume: 2023 Pages: 41~43

    • DOI

      10.21820/23987073.2023.1.41

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Remarks on -te in V1-te V2 serial verb constructions2022

    • Author(s)
      青柳宏
    • Organizer
      東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同利用・共同研究課題「理論言語学と言語類型論と計量言語学の対話にもとづく言語変化・変異メカニズムの探求」2022年度第4回研究会
  • [Book] 形態論と言語理論2023

    • Author(s)
      Alec Marantz、青柳宏、漆原朗子、大関洋平、岸本秀樹、木村博子、成田広樹、田川拓海、中嶌崇、高橋英也、新沼史和、西山國雄、渡辺明
    • Total Pages
      -
    • Publisher
      開拓社
  • [Book] コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論32022

    • Author(s)
      青柳宏、秋本隆之、石崎保明、小川芳樹、岸本秀樹、佐藤陽介、佐野真一郎、下地理則、杉崎鉱司、鈴木亨、田中智之、時崎久夫、中山俊秀、縄田裕幸、南部智史、前田雅子、前田満、宮川創、森山倭成、柳朋宏、他10名
    • Total Pages
      445
    • Publisher
      開拓社
    • ISBN
      978-4-7589-2377-4
  • [Remarks] researchmap.jp/hiroshi_aoyagi

    • URL

      https://researchmap.jp/hiroshi_aoyagi/published_papers/edit

  • [Remarks] academia.edu/HiroshiAoyagi

    • URL

      https://nanzan-u.academia.edu/HiroshiAoyagi

  • [Remarks] researchgate.net/profile/Hiroshi-Aoyagi-2

    • URL

      https://www.researchgate.net/profile/Hiroshi-Aoyagi-2

URL: 

Published: 2023-12-25  

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