2021 Fiscal Year Research-status Report
<明確に規定できない文脈パラミタ―に依存する変項表現>のストラテジーとメタ意味論
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20K00557
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山森 良枝 (松井良枝) 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70252814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 前提 / 擬似条件文 / 誤謬推論 / 量の原則 / 前件強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、条件文の形式を持ちながら、前件が後件の生起する世界を制限しない擬似条件文と誤謬推論について、前者には、常に生じる容認の含意を推論結果、後件をその前提に修正した論理構造を、また、後者には、常に偽になる後件の前提として、前件ではなく、隠れた前提を仮定した論理構造をそれぞれ提案した。以上の提案を踏まえて、今年度は、これらの論理構造の動機付けとは何かを明らかにするために、背後で作用する語用論的要因を追及すべく、次の2つの側面からのアプローチを試みた。第一は量の原則と前件強化の関係であり、第二は前提の帰属文脈とcommon groundの関係である。 具体的には、(i)擬似条件文と誤謬推論は、前件が後件の前提を提供しない点において、量の原則(話者は会話の目的のために必要で十分な情報を提供しなければならない)を逸脱する。そのため、量の原則を遵守するために、必要で十分な情報を提供し得ない前件とは別の十分条件を追加して前提を強化することが必要になる。疑似条件文では、常に真となる後件命題が、誤謬推論では、隠れた前提がそれぞれ追加される前提である。ただし、(ii)擬似条件文の(前提として追加された)後件がcommon groundに含まれ、帰属するのに対して、誤謬推論の隠れた前提はcommon groundの外側にあり、帰属しない点において対立する。その結果、(iii)擬似条件文(空腹なら、サイドボードにビスケットがあるよ)では常に推論結果として容認の含意(ビスケットを食べてよい)が生じ、誤謬推論では常に偽になる推論結果が生じること、を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに擬似条件文と誤謬推論の論理構造を提示したものの、なぜそのような論理構造が生起するのか、その背後で作用する語用論的要因は何かについては、不分明であった。今年度は、この未解決の問題の解明に着手し、一定の結果を得たと考えられる。ただ、コロナ禍の下、当初計画していた出張や人的交流などに支障が生じ、情報収集の観点からの「遅れ」が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえて、擬似条件文と誤謬推論の生起メカニズムをより明確に捉えるための理論的分析方法の確立を目指したい。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、今年度も、コロナ禍の下、計画していた国内外の学会、研究集会への出張が全てキャンセルされ、旅費を中心にスムーズに執行することができなかった。今後は、コロナの感染状況などを考慮しつつ、海外出張も視野に入れた活動を目指したい。
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Research Products
(3 results)