2021 Fiscal Year Research-status Report
複数性の本質を求めて:統一的な枠組みで捉えた日本語諸方言における「ら」の意味用法
Project/Area Number |
20K00562
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
大島 一 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (10538036)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 言語学 / 複数性 / 日本語諸方言研究 / ハンガリー語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本語諸方言における複数性表現(「太郎たち」「子どもら」など)の中でも,特に,非人間名詞にもつく複数接尾辞「ら」(「猫 ら」など)に注目し,従来,各地方言レベルでしか調査されてこなかった複数性についての調査を,諸方言を通して統一的な理論的枠組みで調査分析するという 新たな手法を取るものである。これにより,1)個別方言レベルでは得られなかった「数」に関しての新たな知見を方言研究および一般言語学に寄与できる。 2)諸方言の複数性についての新たな調査票を作成することで,今後の方言調査への貢献が期待できる。3)諸方言の「ら」には複数の他に例示用法(「なんか」「とか」)が見られるものとそうでないものがあり,複数や例示などの意味用法における意味発展仮説を検証できる。これらの研究成果は,通言語的にも (通常の複数の他に,近似複数の形式(Pe'ter-e'k「ペーテル-たち」)も持つハンガリー語との比較対照),「数」の研究において多大な貢献が可能となる。
【令和3年度における研究実績】新型コロナウイルス感染拡大のため,当該年度においても,現地調査が不可能となった。したがって,複数表現の「ら」の調査に関して,ほぼ進展がないことを意味する。一方で,追加データが新たに加わったCOJADS(日本語諸方言コーパス)において予備調査を展開している。令和4年度は現地調査も可能ということから,大阪および和歌山地域のインフォーマントに対する調査を実施する予定ではある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度に引き続き,実施予定だった,大阪および和歌山地域における複数性表現の「ら」の対面調査は,今般の新型コロナウイルスのため,いまだ実施できていない。そのため,これに関するデータの未取得により,研究のアウトプットも当然ながら成果を残せていない。 また,複数性の対照研究として,ハンガリー語および周辺地域のハンガリー語方言の予備調査も,当該年度の国際学会出張の際に実施予定だったが,こちらも国外出張が不可能となったことから,実施できないこととなった(ちなみに,こちらは令和4年度夏に実施予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り,前年度に引き続き,新型コロナウイルス感染拡大のため,対面での調査はすべて不可能となり,研究成果を出せていない。今後は対面調査も入念な注意を払った上で可能ということから,実施していく予定である。同時に,大阪および和歌山地域の複数性表現「ら」に関しては,COJADS(日本語諸方言コーパス)における再調査を進めた上で,研究発表,その論文化に繋げたい。茨城地域においても同様で,対面調査も実施するとともに,電話やメールなど,対面によらない調査方法も同時並行することで,遅れている調査状況を改善したい。 対照研究としてのハンガリー語調査は,令和4年度夏に,ウィーン大学(オーストリア)での国際学会発表出張の際に,現地ブルゲンラント州のハンガリー語話者コミュニティに赴き,実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度,令和4年度が当初予定の最終年度であり,これまでのコロナ禍による対面調査や学会発表などの出張が出来なかったため,かなりの金額が残っているが,それを今年度夏のオーストリア出張(調査と国際学会発表)で使用する予定である。
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