2022 Fiscal Year Research-status Report
中動態としてのフランス語代名動詞の研究 ―受動的用法を中心に―
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20K00572
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井口 容子 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00211714)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 受動的代名動詞 / 総称性 / モダリティ / フランス語 / 中間構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス語の受動的代名動詞は、総称性、モダリティ、叙述の類型など、さまざまな観点からみて興味深い構文であるといえる。2022年度は特に総称性とモダリティに注目して研究を行った。まずMari(2011), Menendez-Benito(2013), Boneh(2016)等の文献を精読し、総称性に関する考察を深めた。その上でLekakou(2005, 2008)における中間構文の分析を批判的に検討し、その利点と問題点を示した。 Lekakou(2005, 2008)は習慣的総称(habitual generic)と傾向的総称(dispositional generic)の二つを区別し、中間構文が表す総称性は傾向的総称であるとする。そして中間構文の意味構造は、力動的モダリティ(dynamic modals)のひとつであるdispositional willの構文についてBrennan(1993)が示したものに近いと考えている。 Lekakouの主張は、中間構文の持つ可能のモダリティを考える上で興味深い示唆を与えるものであり、「自発」から「受動」へという中動態の機能拡張の観点から考えても一定の妥当性を持つものであると考えられる。しかしながら他方において、フランス語の受動的代名動詞には、主語以外の要素に「傾向付与」を行う事例が存在することから、このままでは問題を含むものであるということを示した。 この研究の成果は、2022年12月10日に水産大学校を主催校として行われた日本フランス語フランス文学会中国・四国支部大会において口頭発表を行い、機関誌である『フランス文学』第34号に「フランス語の受動的代名動詞と総称性」というタイトルで論文が掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は「研究実績の概要」欄に記したように、おおむね順調に総称性およびモダリティの考察を進めることができた。だが2021年度まではコロナ禍の影響や、学会関連の仕事など他の業務が多忙であったため、遅れが生じており、形式意味論的分析がまだ十分には行えていない。そのため上記の判断になった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も引き続き、受動的代名動詞の総称性とモダリティに注目して研究を行う。これまで行ってきた考察を基に、形式意味論的にどのような形で記述するのが妥当であるのか考えていく。統語的な側面も考慮しながら、分析を進めていく。 また、この問題は「属性叙述/事象叙述」を区別する「叙述の類型」(益岡2008, 影山2012等)とも緊密に関係するものである。この観点からも考察を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度においては、コロナ禍のため出張もままならず、資料収集にも困難があった。それに加えて、2021年にオンラインで開催した全国学会の実行委員長を務めたこともあり、研究をなかなか進めることができなかったため、残額が生じた。2022年度は比較的順調に研究を行うことができたが、上記の理由のため生じたものが次年度使用額として残っている。 2023年度は研究をさらに進めるため、書籍の購入、資料収集や研究成果発表のための出張などにより、助成金を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)