2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Language Contact and Language Maintenance in the Republic of Nauru and Brisbane Australia
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20K00573
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Research Institution | Komatsu University |
Principal Investigator |
岡村 徹 公立小松大学, 国際文化交流学部, 教授 (10288954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 危機言語 / 言語保持 / 言語衰退 / 言語接触 / ピジン英語 / ナウル語 / 社会言語学 / ナウル島 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、ナウル島で言語接触および言語保持の実態を観察する予定であったが、新型コロナウイルス流行のため入島できなかった。しかしながら、島内で話されているナウル語とピジン英語のこれまで筆者が収集したデータや他の研究者が集めたものとを照らし合わせ、考察する機会を得た。その結果、ナウル語とピジン英語の言語学的隔たりが大きいことやその他社会的要因が重なって、言語の収斂現象は起きにくいことを指摘した。本研究では、危機言語の実態把握を通して、オセアニア以外の地域でも応用可能な普遍的な言語衰退のモデルを明らかにする方向性があり、その可能性を指摘した。加えて、言語が衰退する要因は複数あり、それを単に列挙するだけではなく、要因間の関係性を明確にした、傾斜が存在することを提案した。具体的には、居住環境を中核要因とした言語の衰退に関するモデルを実証的に検証し、言語の衰退に関する新たな理論の構築を手掛けた。こちらは米国のIGI Global 出版社より、出版の機会を得た。 もう一つの大きな研究は、国立公文書館および国立国会図書館にて貴重なデータを収集し、日本人と現地島民の接触頻度を考察する機会を得たことである。「島民移送事件」は、日本海軍が食料事情を緩和する目的で行ったが、戦局が悪化し、当初計画を断念せざるを得なくなった可能性を指摘したが、当該作戦はナウル人、トラック諸島民、オーシャン島民、日本人、中国人、朝鮮人が接触する環境が作られたが、期間変数が短かったこともあり、ピジン化は起きず、中間言語的な産物を作り出すにとどまったことを指摘した。こちらは日本オセアニア学会の Newsletter に発表する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常とは異なる状況(コロナ禍)にあって、現地ナウル島に入島できず、本研究の進展が危ぶまれたが、これまで筆者が収集したデータや他の研究者が集めた資料を基に、言語衰退にかかる理論的考察を行えたことは幸運であった。そして、それを査読論文集という形で、国内外の研究者からのコメントも受けながら執筆・出版できたことは大きな収穫であった。 また、国立公文書館および国立国会図書館において、貴重な公文書を入手し、第二次世界大戦下におけるナウル人や日本人や中国人らの行動を詳しく知ることができたのは、言語接触および言語保持にかかるモデルを確立するうえで大いに参考になった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、令和3年度は豪州ブリズベン在住のナウル人に焦点を当てるが、事情が許せば、ナウル島にも入島し、言語保持および言語接触の実態を観察する。危機言語の実態把握を通して、オセアニア以外の地域でも応用可能な普遍的な言語衰退のモデルを明らかにする。 しかしながら、新型コロナウイルスのため、必ずしも現地調査ができるわけではないので、その場合は近年国内外で発表された、言語接触および言語保持にかかる研究論文を調査する範囲を広げ、言語衰退に関する普遍的なモデルの構築化を図りたい。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、南太平洋の孤島である、ナウル共和国にてフィールドワークを行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの蔓延により入島できず、渡航費が余った。
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