2021 Fiscal Year Research-status Report
尊敬語の使用変化に関する日韓対照研究:「無尊敬」と「過剰尊敬」に注目して
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20K00579
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 敬語の変化 / 聞き手敬語 / 尊敬語 / 談話効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、対人関係の捉え方の変化により、敬語の使用様相がどのように変化するかを明らかにする。研究2年目である2021年度は、2020年度から始めた韓国のドラマ・映画の文字化作業を終わらせ、分析および考察を行った。その結果を学会で発表し、論文化した。また、データとして使用する日本のドラマ・映画の選定を行い、さらに2次データとして使用する韓国のテレビショッピング談話における言語行動に関する先行研究をレビューした。 研究計画を立てた当初は、1990年代から2010年代までの映画・ドラマを分析する予定だったが、調査を進めていくうちに、敬語の使用様相の変化をより綿密に分析するためには、韓国で社会的変化が著しかった1950年代のデータから調査すべきだと判断し、データを追加することにした。その結果、現在の韓国語において代表的な丁寧体であるhayyo体の変化が最も著しく、1950~1960年代には、上位者が下位者に対して情感的な態度を表すためにhayyo体を使うことがあり、その時には相手を高めようとする意図はないことが分かった。そのため、母が娘に対して、兄が妹に対して使用するという現在では観察されない例も見られた。聞き手敬語は主に6つのスピーチレベルで実現されるが、hayyo体は最も遅く加わったスピーチレベルであり(19世紀後半~20世紀初頭)、現在の使い方になるまで時間がかかったと考えられる。これは、社会的な変化が敬語法に直接的に影響を与えていることを表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、1990年代のデータから分析する予定だったが、2020年度に計画を変更し、1970年度のデータから分析することにした。しかし、調査を進めていくうちに、朝鮮戦争などにより社会的変化が著しかった1950年代のデータから分析した方がいいと判断し、2021年にさらにデータを追加した。韓国語のデータが揃ったところで、日本の映画・ドラマの文字化作業に取り掛かる予定である。また、テレビショッピング談話もデータとして使用する予定であるが、日本にいながら韓国の生放送を録画する方法を見つけるのにも時間を要した。現在、録画方法は見つけており、これからデータ収集および文字化作業に取り掛かる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語のドラマ・映画の文字化作業をしてくれる協力者を至急募集し、文字化作業に取り掛かってもらう予定である。文字化作業が終わったものからラベリングと分析を行う。それと同時に、テレビショッピング談話を収集し、文字化と分析を行う。テレビショッピング談話を分析する際は、過剰な敬語が使われているかどうか、逆に視聴者に親近感を表すために無尊敬を用いる場合はないかなどに注目して分析を行う。
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Causes of Carryover |
学会がすべてオンラインで開催されたため、旅費が未執行となった。また、韓国語のデータを追加したものの、日本語のデータの文字化作業を行っていないため、人件費の執行が当初の予定より少なかった。2022年度に日本語のデータの文字化作業を行うため、2021年度に使用する予定だった予算を文字化作業の人件費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)