2020 Fiscal Year Research-status Report
The Groundwork for Icelandic Diachronic Accentology from Philological and Field Linguistic Viewpoints
Project/Area Number |
20K00594
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
三村 竜之 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00647662)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アイスランド語 / アクセント史 / フィールドワーク / 文献資料 / ストレスアクセント / 古アイスランド語 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究実施計画では、2020年度はアイスランド共和国レイキャヴィーク市にてフィールドワークに基づく現代語のアクセント資料の(追加)収集と、アイスランド大学附属国立図書館にて中世期の文献資料からアクセント資料の採取を、9月と翌年3月の二度に渡り実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、現地でのフィールドワークと資料採取ができなかった。代替策として2020年度は主に、北欧諸国の古書店から購入並びにインターネットを通じて海外図書館より複写・入手を行った文献資料(韻文資料)からアクセント資料の採取・分析作業を行い、中世期のアイスランド語のストレスアクセント体系の構築に重点を置いた。また、これまでの研究調査で既に採取済みであった現代語のアクセント資料から構築した現代語のアクセント体系との比較分析を行い、中世期から現代語にいたる間にストレスアクセント体系に目立った変化はなかったであろうとの仮の結論を導き出した。また、ストレスアクセント体系に変化が生じなかった要因を理論的な観点から考察した。以上の研究結果は、口頭発表2件(日本音韻論学会・音韻論フォーラム, 北海道言語研究会研究例会)、論文2件(『音韻研究』・『北海道言語文化研究』)という形で公表した。2021年5月時点では新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは十分には立っていないが、2021年度は当初の計画通りに臨地調査を実施すべくその準備を進めるとともに、2020年度と同様、インターネット等を駆使して文献資料の収集・分析を精力的に行い、資料の拡充と分析結果の修正・補強に努めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、アイスランド共和国・レイキャヴィーク市での臨地調査が実施できず、現代語のアクセント資料の収集が当初の予定通りには進まなかった。この点では、当初の研究実施計画は「やや遅れている」と言わざるを得ない。しかしながら、その一方で、北欧諸国等の海外古書店やインターネットを通じて中世期の文献・韻文資料の入手が思いの外進み、中世期のストレレスアクセントの姿をかなりの部分、明らかにすることが可能となった。また、これまでに採取した現代語のアクセント資料の分析結果と比較研究を行う時間も十分に確保できたため、ストレスアクセントの歴史的変遷に関する理論的な考察も進められ、その結果、未だ仮説ではあるもののストレスアクセント体系の変化の有無とその背後にある理論的なメカニズムに関して一時的な結論を導くことができた。そのため、総合的に判断すると、2020年度の本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価することができると思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響が強く残っているため、当初の計画通りには研究を実施することが困難であることは(2021年5月下旬時点で)明白である。従って、まず2021年度の前半は、2020年度と同様に、海外古書店や図書館、インターネット等を駆使し、中世期のアイスランド語の文献資料・韻文資料の収集と分析に重点を置いて研究を進める予定である。2020年度に導き出した古アイスランド語のアクセント体系に関する知見の裏付けや修正、補強等を行う。また、2021年度後半に臨地調査・フィールドワークが可能か否かは未だ明らかではないが、実施可能である場合を見据えて、これまでの調査で得られた現代語のアクセント資料の整理と分析を行い、新たな調査項目の選定等々、綿密な準備を行う予定である。また、2021年度内あるいは年度末には、文献資料やアクセント資料の分析を通じて得られた知見を、学会発表・口頭発表や投稿論文の形で公表する予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、当初計画していたアイスランド共和国・レイキャヴィーク市でのフィールドワーク(現代語のアクセント資料の採取・文献資料の閲覧と収集)を行うことができなかった。当初の計画通りであれば、旅費としての支出の割合が多くを占めるため、次年度に使用する額は残らないが、実際には旅費としての支出が皆無であったため、次年度に持ち越す額が発生した。この金額は2021年度分として申請した金額と合わせて、文献史料を入手するための費用に充てるとともに、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着き次第実施に移る計画であるフィールドワークの旅費や人件費に充てる予定である。
|
Research Products
(5 results)