2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00596
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30250997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 二郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50400057)
大島 資生 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (30213705)
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 教授 (00341967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複文 / 連文 / 文連鎖 / 接続詞 / 従属節 / 複文産出の発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 現代日本語の「の」でマークされる補文・「こと」でマークされる補文の分布と、補文の叙実性との対応について、主として、従来「の」について見られた不規則な部分を適切に排除し、残された領域については「の」の許容度と、述部が要求する叙実性が正の相関を示すこととを明らかにした。具体的には、叙実性に対して「の」が不規則なふるまいを見せるのは、(1)対応する「こと」が許容されない領域、(2)従属節内の述部がテンス(の対立)を持たない場合であることを特定し、それ以外の領域に関しては、「仮定する」タイプの補文>「伝える」タイプの補文>「報じる」タイプの補文>「後悔する」タイプの補文の順で補文命題の叙実性が高い(「「後悔する」タイプの補文が最も真であることの安定度が高い)ことを確認したうえで、叙実性の高いタイプの補文ほど「の」の許容度が高いことを明らかにした。 2 現代日本語の名詞修飾に関し、先行研究を博捜・精査し、名詞修飾の文法的振る舞い・意味計算における内包性という概念の再検討を行った。 3 小学生~大学生における未校正作文を収集し、基礎データとして平均文長・RD(難易度)値等を収集したのち、社会人作文との比較分析を行った。分析の結果として、特に高校生意見文における思考動詞複文における主節動詞「思う」の出現、大学生意見文における「考える」の出現が過剰に多く、段落内での分布についても無秩序さが目立つこと、社会人の典型的な書き言葉文章には見られない仮定の単純タラ形が一定数みられることを明らかにした。 4 小学生について英語科(外国語科)授業と国語科授業の連携を試行し、小学生の名詞修飾理解において、学習者の内省においては、日本語の構造理解が英語の構造理解に寄与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の発表についてはコロナウイルスによる発表機会の減少等が影響し、若干の不足があるが、研究内容自体はおおむね順調に進展している、あるいは当初計画以上に進展していると言える。 「の」でマークされる補文の叙実性との対応については、古くは1980年代から可能性を探る研究が存在していたが「見る」の補文、「許可する」の補文等に例外が生じること、「伝える」タイプの補文が「こと」をとる場合の叙実性について誤解があったことから、ながらく十分な対応関係の抽出を行うことができていなかったが、叙実性の規定に関する先行研究の見直しと、恣意的でないデータの峻別により、一定条件のもとでの「の」の許容度と、補文の叙実性との相関の抽出に成功した。 小学生~大学生の未校正作文における調査研究について、おおむね計画通りの規模のデータを確保することができ、分析のための基礎データの算出等を行うことができた。小学生・中学生作文については、宮城信先生ほかの手による、「夢」を表題とした作文群の提供を、高校生意見文については茨城県、大阪府の高校のご協力を得て「歴史を学ぶ意義」を表題とする意見文の提供を受けた。分析については完了はしていないが、主文末の動詞の分布等に発達・習熟上の特徴が現れること等、いくつかの有益な知見が得られつつある。 3 名詞修飾における構成素意識についての調査研究についても、英語教育研究者のご厚意のもと、ほぼ計画通りのデータ量を得ることができた。小学校高学年段階においても、日本語の最も基本的な名詞修飾構造については、一定の理解が行われていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度においては、重点を連文に移し、複文の分析を行うにあたっても、連文からみた複文という観点を重視した調査・分析を行う計画である。また、複文産出における、発達・習熟についても、2021年度までに得られたデータの分析を進め、より広範な知見の獲得を目指す。 また、2022年度は最終年度に当たるため、成果の発表にも注力し、海外発表を少なくとも2件、国内発表・論文投稿を少なくとも5件おこなう計画である。すでに海外発表については、2022年5月下旬における発表が1件採択されている。
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Causes of Carryover |
購入予定の図書・物品の一部が、業者等の納入期限の遅れで当該年度中に購入できなくなったため。また、コロナウイルスの影響で予定していた発表機会が失われたため次年度使用額が生じた。 残額と令和4年度配分額とを合わせ、本年度購入予定であった物品・図書のうち、2022年度に納品可能な物品(外国図書類が中心)を購入、また学会発表(海外含む)のための旅費として使用予定である。
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Research Products
(5 results)