2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00597
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
池田 晋 佛教大学, 文学部, 准教授 (40568680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 構文 / 主題 / 繰り返し表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、人称代名詞を重複使用する“Ni睡ni的覚。(ほかの事に構わず寝なさい)”のような構文(“PVP的N”構文)について考察をおこなった。まず当該構文に関する先行研究を精査し、「ほかの事に構わず」などの意味が発生する要因について未だ明確な説明がなされていないことを確認した。そこで、電子コーパス、演劇台本、テレビドラマ等から広く用例を収集したうえで、この要因を明らかにすべく分析を進めた。分析の結果、構文の意味論的・談話論的特徴として、(1)Nは一般に非指示的であり、VN全体で1つの動作の意味を表すこと、(2)VNが既知情報であること、またPがVNの動作主であるという情報も予め前提知識として共有されていなければならないこと、(3)“P的”が意味上限定しているのは実質的にはVNであること、(4)Pによる意志的な動作行為を表すこと、が明らかとなり、そこから当該構文の核心的意味が「割り当てられた行為を割り当て通りに実行すること」であることを導き出した。この核心的意味が具体的な文脈の中で「ほかの事に構わず」などの意味として顕在化するのである。 本研究課題の主たる目的の1つに、コピー型主題の認定基準を明らかにすることがあった。当該構文のPは、有意志の動作主でなくてはならず、そのことが構文的意味の生成にも大きく寄与しているため、主題というよりは、主語としての特徴を色濃く備えているものと理解される。ただ、中国語の主語と主題の関係は複雑であり、主語が主題を兼ねるという状況も決してないわけではない。そのように考えると、本年度の研究を通して、今後このような構文をどのように扱うべきかという理論的な課題が新たに浮かび上がってきたと言うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本課題開始からの2年間は、新型コロナウイルスの対応や本務校の異動などの影響で研究に充てる時間を十分に確保できなかったこと、また当初取り組む予定であったいわゆる重動句(“他説英文説得非常好。〔彼は英語を話すのが非常に上手だ〕”)が想定以上に複雑で急遽研究計画を見直したことにより、当初の予定に比べかなりの遅れが生じている。重動句に代えて新しく取り組むこととなった“PVP的N”構文については、できるだけ令和3年度中に研究成果を学術論文などの形で発表できるよう作業を進めてきたが、この構文についての調査にも半年程度の遅れがでており、年度中の論文発表は叶わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、前年度までに取り組んできた“PVP的N”構文に関する考察を早急に学術論文にまとめ、年度前半には国内の学術誌に投稿する予定である。この課題が完了した後は、考察対象を“A就A在X”構文に切り替え調査・分析を進める予定である。“A就A在X”構文については、研究代表者は過去に調査をおこない、学術論文を発表したことがあるが、なお積み残した問題が多く、再考の余地が残されていた。以前の研究では当該構文が「とりたて」の機能と深く関わっているという可能性を指摘したが、とりわけその点について更に深く掘り下げた分析を進める必要がある。そこで、用例収集の範囲を口語性の強い資料などにも広げながら、より幅広い用例に基づいて当該構文ととりたて機能との関わりを明らかにしていきたいと考える。 口語資料については、前年度に引き続き、テレビドラマなどを素材としたデータベースの作成を進めていく予定である。この作業については、前年度と同様、本務校の留学生を短期雇用し、分量の拡充をはかっていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、国内学会、国際学会のいずれもがオンライン開催または中止となり、学会参加のための旅費が発生しなかった。令和4年度および令和5年度に各種学会が対面開催に戻るようであれば、予定通り旅費として使用する予定であるが、今後も数年にわたって学会のオンライン開催が継続する可能性も否定できない。その場合は、(1)データベースの拡充により力を入れ、複数人を短期雇用しデータベース構築作業を進める、(2)オンライン講演会を開催し国内外の著名研究者を招くなど、別の形で使用することを検討している。
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Research Products
(2 results)