2021 Fiscal Year Research-status Report
Verb-argument agreement observed in Malay varieties based on parallel corpus data
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20K00599
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
塩原 朝子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30313274)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 言語学 / 一致 / 照応 / 形態統語論 / インドネシア語 / マレー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度までに構築したブルネイ・マレー、新興変種であるインドネシア語マカッサル方言のコーパスに対して、他動詞文の動作主項、動作の対象項、そして自動詞の唯一項の現れ方を明示する文法的タグを付した。その結果、インドネシア語マカッサル方言におけるクリティックの現れ方に著しい個人間の差異があることがわかった。この差異が生じた理由についてデータ収集時のメタデータに基づいて分析したところ、話者の母語(主に近隣の優勢言語であるマカッサル語、またはブギス語)、話者の社会的地位、および言語データ収集の際のセッティング(レジスター)が関係していることがわかった。この点について、電子メールや電話、SNSなどを通じたインタビュー調査によりさらなる情報を得た上で社会言語学的考察を深めた。現時点での仮説として、話者は発話のセッティングに応じて自分の複数の属性のうちどの属性を特に示すかを選択し、それに応じて用いるクリティックのセットを使い分けているということがいえそうである。この点については来年度以降現地調査を行うことによってさらなる検証を行う予定である。 さらに、ジャカルタで話されている口語インドネシアと標準的インドネシア語のコーパスを整備する作業を行った。このコーパスの一部について口語と標準語の二つの変種の違いを考察を加えた上でグロス付きテキストの形で公刊した。さらに先行研究により、一致の発達が観察されている非標準変種の一つ、パプア・マレーについてMax Planck Instituteの言語アーカイブから公開されているコーパスの精査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の予定通りコーパス構築およびそのタグ付けが進んでいるだけでなく、一致の発達の背景にある社会言語学的要因についても考察することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度までに行ってきたコーパスへのタグ付作業を継続する。特にMax Planck Instituteの言語アーカイブから公開されているパプア・マレーのコーパスへのタグ付けを集中して行い、年度後半には一致に関わる事象の数量的分析に取りかかる予定である。また、COVID-19の感染状況が改善するようであればインドネシア・マカッサルにおいて現地調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査ができなかっため。
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