2023 Fiscal Year Annual Research Report
A cross-linguistic study of pragmatic inference in noun-modifying constructions with relational head nouns: With particular attention to Japanese and Korean
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20K00603
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
堀江 薫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (70181526)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相対名詞 / 名詞修飾節 / 語用論 / 比較類型論 / 日本語 / 韓国語 / 中国語 / アルメニア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度から開始された本研究においては、寺村秀夫氏の連体修飾節(以後「名詞修飾節」)の先駆的研究に触発され、その中で特に、相対的な概念を表す名詞、すなわち、空間的な相対名詞(例:上・隣・右)、時間的な相対名詞(例:翌日・朝・一週間前)、因果関係を表す相対名詞(例:原因、結果、罪)を主要部とする「相対補充」の名詞修飾節に着目した。相対補充の名詞修飾節の具体例は「[山田さんが座っている]隣」である。 日本語の相対補充名詞修飾の顕著な特徴は、上記の例で言えば「山田さんが座っている」のは「隣」という場所ではなく、「席」や「椅子」のような空間であるのにも関わらず、そのような「基準点」を明示せず「山田さんが座っている(席の)隣」というように「( )」で示した基準点の情報を推論で補っている点である。この日本語の特徴、特殊性は寺村氏の研究において指摘されていたが、通言語的な観点から十分な検討をされていなかった。 寺村氏以後、フレーム意味論の観点から松本善子氏が寺村氏の連体修飾節研究を発展させたが、松本氏の研究は相対名詞修飾節に特に焦点を当てたものではなかった。 本研究は、日本語の相対名詞修飾節を、文法的な類似点が顕著である韓国語、さらに同じく東アジア言語である中国語、さらにヨーロッパ言語の中で、アジア言語と共通する特徴を併せ持つアルメニア語の相対名詞修飾節と比較した。その結果、中国語はもとより、韓国語においても「基準点」名詞を省略した相対名詞修飾節は成立しにくいことが明らかとなった。一方、興味深いことにアルメニア語においては「基準点」名詞を省略した相対名詞修飾節が一定の範囲で成立することも明らかとなった。
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