2020 Fiscal Year Research-status Report
Compilation of Japanese-Berber dictionary
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20K00618
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
石原 忠佳 創価大学, 文学部, 教授 (10232331)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベルベル語辞典 / ティフィナグ文字 / モロッコ / ポエニ文字 / 古代リビア文字 |
Outline of Annual Research Achievements |
ティフィナグ文字を併記したベルベル語辞典は、世界各国でいまだ発刊されていない。その第一の理由は、ベルベル語の地域格差があまりにも多く、標準ベルベル語を確定してそれを文字化する作業が進んでいないこと。次に、今日までベルベル語が直面していた言語政策上の状況である。ベルベル語が教育の場に導入されたのは2003年になってからで、モロッコ王国が国家として、ティフィナグ文字を使った教育を公式に認可したのは、遅まきながら2011年の憲法改正の時点である。したがって、「話し言葉の文字化」は今日でも困難を極める作業であるが、実施しなければならない研究・調査であると認識している。 応募者はポエニ文字から古代リビア文字を経て派生したとされるベルベル文字(Tifinagh)の再築に取り組み、拙著『ベルベル語とティフィナグ文字の基礎 -タリーフィート語入門―』春風社(2014)で巻末の索引にティフィナグ文字による語彙を示した。 しかしながら索引で取り上げた語彙は北部方言的な素性を免れず、これらの語彙を分類整理して標準ベルベル語辞典として編纂するのは整合性が不十分であると考えてきた。 本研究の目的は、ベルベル語辞典編纂にあたって標準ティフィナグ文字を構築し、最終年度にティフィナグ文字とラテン文字を併記したベルベル語辞典を編纂することである。その理由として、①ベルベル語は北アフリカ全体で約2500万人の話者を抱えているにもかかわらず、ベルベル語をティフィナグ文字で表記した辞典が本邦では今日まで刊行されていないこと。②これまで「ベルベル語は綴られることのない話し言葉である」と認識され、文字として書きとどめられることがなかったこと。③ベルベル語の使用地域は北アフリカ各国に飛び地的(Enclave)に散在しているため、どの地域の言葉を「ベルベル 語」として定義するかが困難であったこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では、スペインおよびモロッコの4つの研究施設を拠点として、以下の手順に沿って研究計画を実施する計画であった。2020年夏季: スペイン高等学術研究所図書館および在モロッコスペイン教育省付属図書館に蔵書として保存された時代別写本を比較対照し、ベルベル文字の原型データを構築する。2021年春期: 在モロッコ テトゥアン大学付属レルチュンディー研究所図書館に移り、館内に保存された原本写本と照合する。それらを手がかりに、TetuanからAl-Hoceimasにいたる5つの集落でフィールド・ワークを実施し音声資料を作成する。今回の調査では、中アトラス山脈一帯のみに生息する鳥類、植物類、また農作物の名称も文字化作業の対象とする。 しかしながら新型コロナの影響で、海外渡航に支障をきたしたため、2020年度の一年間を通して、国外でのフィールド・ワークに基づいた研究調査は断念せざるを得なかった。したがってこうした状況を補足するため、モロッコ及び諸外国研究機関の研究者とZOOMを通じて緊密な連絡を取り、文献資料の提供を受けることができた。その結果、『ベルベル語辞典』の品詞別の語彙の骨組みは構築できたが、目下のところ音声資料との照合作業には至っていない。また最終年度にベルベル語辞典の発刊を計画しているため、2021年度9月には「学術図書助成金」への応募を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って2021年度夏季には、フィールド・ワーク実施のための海外渡航を予定しているが、パンデミックの状況によっては計画の変更も念頭に置いている。渡航地に関しては、7月末日の時点で日本から渡航可能な最初の帰着地を決定する。その場合、もしスペインが入国不可能な場合は、最初の入国地をモロッコに変更する。その際には翌年春期の計画を夏季に先行させ、レルチュンディー研究所を拠点として研究・調査を開始する。 最終年度に出版予定の『ベルベル語辞典(日本語―ベルベル語)で取り上げる語彙を、品詞・項目別に整理して選定する。収集を計画しているものは、以下の項目に関連した語彙である。1)動詞 2)形容詞 3)数詞 4)名詞 ・ 曜日 /月の名 /時 刻 /季 節 /位置と方角, ・ 色, ・ 人 体 /健 康 /病 気, ・ 家 ,、 ・ 家庭 /家庭用品 /台 所 用 ,、 ・ 食料品 /食 事 /料 理,・ 野 菜 /果 物, ・ 衣 服、 ・ 日常生活, ・ 社 会, ・ 動 物 /鳥 類 /昆 虫 /生き物 /魚介類, ・植物, ・乗り物 /交 通 /旅 行, ・ 商 売 /職 業 /仕 事, ・自然 /世 界 /天 候, ・鉱物 /金 属, ・公共施設, ・国家と政府 /法 律, ・教育 /学 問, ・文房具, ・スポーツ /競 技, ・ 村 /田 舎 ・武器, ・宗教, ・世界の国と言語, ・文法用語, ・挨拶と感謝 4) 副詞・接続詞 ・前置詞 ・今後は各国の研究機関や研究者と速やかに連絡を取り、各国の研究環境に関する情報交換を強化する。
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Causes of Carryover |
海外渡航を実施しなかったため、2020年度は申請した助成金の全額を使用しなかった。
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