2021 Fiscal Year Research-status Report
A composite approach to Middle Indo-Aryan assimilation: Assessing the validity of the consonant hierarchy
Project/Area Number |
20K00620
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
鈴木 保子 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (00330225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Asokan Rock Edicts / Middle Indo-Aryan / Gandhari / consonant clusters / consonant hierarchy / assimilation / metathesis / Khotan Dharmapada |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、中期インド・アーリア語の同化が子音階層を基盤に画一的に定義できる特異なものではなく、他の子音結合の変化と合わせて通言語的に頻度の高い、自然な変化の集積であることを示す。2020年度は最初期の中期インド・アーリア語である紀元前3世紀のアショーカ王碑文のうち、方言間の違いが明確に現れている岩石法勅に着目して、西・北西・北・東の4つの地域の計6方言の全ての子音結合の発達をまとめた。この過程で、より多くの子音結合が残存する北西部における発達が重要であることが明確になった。従って、2021年度は、同じ北西部の中期インド・アーリア語であるガンダーラ語で、紀元前1世紀後半に成立したとされるホータン・ダルマパダのrを含む子音結合の発達を精査して、岩石法勅北西部方言と比較し、子音結合におけるrの脱落の割合が約200余年で15-45%程度増加していること示し、音変化進行の1例を提示した。岩石法勅とダルマパダでは、CrよりrCの方が同化・子音結合簡略化がより進んでいるという共通点はあるものの、ダルマパダではrに隣接する子音のタイプによりr消失の割合がより明確に異なり、また、岩石方勅ではrに後続する歯閉鎖音のそり舌化がほぼ規則的であるのに対して、ダルマパダでは、そり舌化が稀であることも明らかにした。さらに、北西部では現代語のダーディック諸語に至るまで、r音転換が見られるが、中期ではこれがどの程度実際の発音を反映しているのか、または単に表記上の現象かが先行研究で問題にされてきたが、他のインド・ヨーロッパ諸語の類例、およびアショーカ王岩石方勅やダルマパダに見られるタイプ別子音結合の変化のパターン、特に無標または安定していてより残存しやすい子音結合と有標または不安定で同化・消失しやすい子音結合の区別をもとに、表記上の音転換は実際の音変化を反映する可能性が高いと結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、前年度までに執筆・投稿した下記の2論文が出版された(下記 [雑誌論文] 参照)。(1) The development of labial clusters in the Asokan Rock Edicts. Studia Orientalia Electronica 9(1): 160-172. 2021年12月 (2) The development of r-clusters and syllabic r in the Asokan Rock Edicts. In Peter M. Scharf (ed.), Sabdanugamah: Indian linguistic studies in honor of George Cardona. Volume II. Historical linguistics, Vedic, etc., pp.165-200. Providence, RI: The Sanskrit Library. 2022年2月 上記「研究実績の概要」にある論考は以下の通り2つの論文にまとめられ、(3)は学術雑誌に投稿して審査中、(4)は加筆修正中で、2022年度に継続して研究を進める。(3) The development of r-clusters and syllabic r in Gandhari Khotan Dharmapada: In comparison with the Asokan Rock Edicts.(4) Rhotic metathesis in Gandhari: From a cross-linguistic perspective.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Rhotic metathesis in Gandhari: from a cross-linguistic perspective(=「現在までの進捗状況」(4)、2021年度より継続)アショーカ王碑文北西方言、ホータン・ダルマパダおよび他のカローシュティー文献に見られる、いわゆるダーディック諸語のr音転換に関連して、残存または消失しやすい子音結合のタイプの独自の検証と音転換の類型論的な研究に基づいて解釈する。 (2)The development of consonant clusters in the Asokan Rock Edicts(仮題)アショーカ王岩石法勅のそれぞれの方言における異なる発達を子音結合のタイプ別にまとめ、子音結合の発達の包括的な分析および解釈を試みた。これは前プロジェクト期間中に出版された2論文および「現在までの進捗状況」(1) (2)を組み込んだ著書となる予定で、次年度以降に継続する。すでにできあがっている原稿を加筆修正し、特に1章Introductionは先行研究の纏めと問題点の指摘、8章Conclusionsは資料の解釈を中心に補強し、新たに気づいた先行研究を踏まえて分析・解釈に改良を加える。この論考の趣旨は、中期インド・アーリア語の同化は子音階層に基づくものではないが、そのような外観を呈するのは一般的な(特異ではない)音韻的傾向の集積であることを示す。 (3)Old Indo-Aryan gemination and its relevance to Middle Indo-Aryan assimilation 中期インド・アーリア語の同化の先駆けとされる後期ヴェーダ文献に見られる重子音化の現象を一次文献に基づいて精査し、一般的に受け入れられている中期インド・アーリア語の同化との関連を検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルス蔓延により、計画していた出張を中止し、主に海外からの発送となる書籍購入もしばらく控えていたため、支出は予定した額を下回った。2021年度は、まだ出張は控えたものの、支出は主に書籍購入および英文構成で、前年度に控えていた分の支出により今年度分が増加して、次年度より前倒し請求をした。よって、余剰分はもともと次年度に予定していた費用であり、(出張は当分見合わせた方が賢明と考えられるので)2021年度に引き続き研究資料収集および書籍購入や英文校正に充てる。
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Research Products
(2 results)