2020 Fiscal Year Research-status Report
歴史統語論・一般言語学的観点から見た日本語主語表示体系の歴史的変化
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20K00629
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 銀珠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60547496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 助詞「が」 / 述語 / 行為連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年は研究成果として「主格助詞「が」の述語の拡大―上代から中世までを対象に―」(『名古屋大学国語国文学』113号 ,p.108-122,査読有)を発表した。 本論文では,上代から中世にかけて,主格助詞「が」の述語がどのように拡大したのかについて考察した。主格助詞「が」の述語は「活動→位置変化→状態変化」を表す語へと拡大した。述語の拡大のプロセスは外界の世界を言語化する際の認知の仕方である行為連鎖のプロセスと類似すると論じた。また,「が」の本来の機能である「指示」機能を基盤として新情報提示用法や談話的際立ちの用法に拡大したものと考えられた。 本論文の意義は,現代語の主語を表す助詞として勢力を拡大した助詞「が」がどのような過程を経て,述語の制約がなくなっていったのかについて考察し,主語表示を決定する要因の1つについて通時的な観点から明らかにした点である。「が」が係る述語の通時的な広がりが,現代語の説明で外界の世界を言語課する際の認知の仕方として設定されている行為連鎖のプロセスと類似する点は,興味深い。 また「指示」機能が「が」が主語を表す助詞として勢力を拡大していく際の一つの重要な要因として提示された点も意義深い。ただ,この点については詳細の議論を行っておらず,通時的変化を綿密に考察する必要がある。 研究実施計画では,2020年度と2021年度のスケジュールが混ざって実施されている。言語データ収集と分析をする際に,興味深い点が観察されたためであるが,今後の予定に大きな変更をもたらすものではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択課題の3年間の予定では,2020年度の中古~近代までの日本語言語資料から無助詞と「の」「が」が主語を表す用例を収集し,エクセルでデータ化し,分析し,2021年度に,収集した用例を基に主語表示を決定する統語的要因について考察するスケジュールであった。しかし,用例を収集している内に,興味深い点が観察され,2020年度と2021年度の予定を少し混ぜて行うことになった。当初の予定とは少しずれているが,当初の予定に大幅な変更を伴うものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
採択課題の本年度の課題は,主語表示を決定する中古,中世,近世,近代の時代別に,無助詞と「の」「が」の共時的体系における相互関係を考察し,主語表示を決定する統語的要因について考察することである。2020年度に2021年度の課題の一部を考察しており,反対に2020年度の課題の一部が残されている。ともに予定通り本年度の課題とする。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナウィルス防止対策で,国内・国外出張を控えた。同じ理由で,国内外の研究者を招聘し公開で研究会を行うことが出来なかった。そのため,旅費と人件費・謝金の予算を使用していない。今年度もコロナウィルスの状況を見ながら,判断していく。
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Research Products
(1 results)