2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00637
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小野 正弘 明治大学, 文学部, 専任教授 (90177270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角岡 賢一 龍谷大学, 経営学部, 教授 (70278505)
中里 理子 佐賀大学, 教育学部, 教授 (90313577)
竹田 晃子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (60423993)
川崎 めぐみ 名古屋学院大学, 商学部, 准教授 (60645810)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オノマトペの認定基準 / オノマトペの記述 / オノマトペのニュアンス付加 / オノマトペの連濁 / 方言のオノマトペ / 民話のオノマトペ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究テーマである「日本語オノマトペの原理的考察と記述的分析」について、全体としての実績として、本年度は、「オノマトペの認定」について、年度末に、メンバー全員によるZoomミーティングを行ない(当初は、東京で対面によって行なう予定だったのだが、コロナ禍のためやむを得なかった)、いわゆる「疑似オノマトペ」について、「AっBり」型のオノマトペ認定について、民話におけるオノマトペ認定について、また、動詞語幹起源と目されるオノマトペの認定について、問題提起し、ディスカッションを行なった。このことによって、オノマトペ認定に関する問題意識を共有し、また、各人の立場も明らかになった。 また、メンバーである、小野・竹田・川﨑は、合同で、日本語学会ならびに宮沢賢治学会において、宮沢賢治によるオノマトペをどのように認定することができるかに関して、研究発表ならびに招待講演を行なった。特に前者は、ポスター発表であったが、参加者との活発な遣り取りが行えて、意義深いものであった。 また、研究分担者・中里は、「AっBり」型オノマトペについて、歴史的な観点から、いくつかの語についてケーススタディーを行なった。研究分担者・角岡は、上方方言を分析することを通じて、方言オノマトペとの関連性を追求しようと準備した。 総じて、コロナ禍のなかで、よく、各自の立場から、オノマトペの認定と記述に資するような業績公表と、データ蓄積を行なっていたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、全体としての進捗状況における、自己点検・評価であるが、コロナ禍のなかにあっても、Zoomによって全体的なミーティングを実行し、オノマトペ認定に関する、各自の見解を持ち寄ってみて、それぞれの「オノマトペ認定」観を互いに知り得たということは、意義深いものであった。 次に、チームとして、具体的に、宮澤賢治「なめとこ山の熊」をテキストにして、そこに現われたオノマトペ候補について、小野・竹田・川﨑のそれぞれが認定したオノマトペを提示して、どのような認定基準によって、そのような差異が生じているかを開示した研究発表を行なったことは、これまでに行なわれなかったような発表タイプであって、反響も大きく、オノマトペ認定が、実は、なかなか困難で厄介であることを広く知らしめたということは、大きいものであった。 また、宮沢賢治学会という、賢治を専門とする学会において、賢治オノマトペについて、その認定における「ゆれ」の存在を明らかにし、賢治の作品群と同時期の方言資料とを引き当て、民話からの影響関係を問題提起したことも、オノマトペの原理的考察と記述的研究を推し進めたものと言えよう。 また、個人による進捗状況の自己点検・評価としては、まず、「AっBり」型のオノマトペ認定について、具体的に、「しかと」「しつかと」「しつかり」、「とくと」「とつくと」「とつくり」についての検証が行なわれたことは、知見を確実なものとするという点で、意義深いものがあった。 以上のことから、オノマトペを認定する基準に関する考察に、一定の進捗を見ることができたというように、自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画のうち、初年度の令和2年度は、それぞれのオノマトペ認定の感覚の差異の存在を確認したが、その際、単純に、全体的統一見解を提示しようとするのではなく、自分とは異なるオノマトペ認定観を、各人のなかに持ち帰って、自らのオノマトペ認定観と摺り合せつつ、さらに高次のオノマトペ認定観を獲得するよう努める必要があると、考えた。その一端を実現したのが、令和3年度の、宮澤賢治「なめとこ山の熊」という同一テキストからオノマトペを切りだそうとすると、研究者によって、どのような異動が生れるのかを提示するという、恐らく前代未聞の試みであった。これは、幸い、ほかの研究者からも好意的に受け容れられたのであるが、もともと、目標にしていた、そのことで、どういったオノマトペ認定感を形成できたのかという検証が、いまだ十分ではないようにも思われる。したがって、最終年度、令和4年度には、その総括も必要となる。 また、個別的な推進方策としては、個別具体的な資料の記述をさらに増やすことが挙げられる。基本的に、古典は、研究分担者・中里が、近現代は、研究代表者・小野が、方言は、研究分担者・竹田が、民話(方言)は、研究分担者・川崎が分担し、研究分担者・角岡は、一般言語学的な知見に基づく、オノマトペの認定を担当しているのであるが、最終年度を迎えるにあたって、各自、総括的なテーマを選んで、最終報告に持っていきたい。具体的には、小野は、宮澤賢治作品からオノマトペを取り出そうとするときの手順を明示化することを目指す。角岡は、漢語由来の疑似オノマトペについて、総合的な知見をまとめる。中里は、手がけてきた、オノマトペの歴史的認定について、さらにケーススタディーを重ねて総合化する。竹田は、従来の辞書等におけるオノマトペ認定をさらに整理する。川﨑は、民話のオノマトペをさらに統合整理する。以上のような方向を事としたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスが蔓延したため、緊急事態宣言が発出されるなどし、大学キャンパスが十分に使用できない、フィールドワークや文献渉猟のための、国内の移動が自由にできない等、研究活動に多大な制約が加わったため。令和4年度は最終年度なので、費目を変更するなどして、適切な使用に努めたい。
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Research Products
(18 results)