2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00642
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
井上 史雄 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40011332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 新 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 准教授 (00526270)
山下 暁美 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (10245029)
半沢 康 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)
鑓水 兼貴 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報発信センター, プロジェクト非常勤研究員 (20415615)
高丸 圭一 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 教授 (60383121)
邊 姫京 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (90468124)
久能 三枝子 (高田三枝子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90468398)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 標準語 / 公共用語 / 方言 / 実時間 / 記憶時間 / 浜荻 |
Outline of Annual Research Achievements |
標準語・共通語の全国普及が、言語学の各分析レベルで確認された。各地の方言(新方言)の公共場面への登場と、標準語への採用が確認された。また「気づかない方言」「気づかない変化」が音声、文法、敬語、語彙、談話パターンなど多くの面で実証された。 江戸時代中期250年前の方言集『浜荻』は、庄内方言と江戸在勤の武士ことばを記した資料である。その戦後まもなくの調査の追跡という大規模調査によって、江戸ことばの二重性、つまり社会階層と場面による相違が析出された。多変量解析を適用し、歴史社会言語学観点から計量語彙論的分析を施した。武家にふさわしい用語は、今も標準語、公共用語として普及中で、近代語への連続性が確認された。戦後まもなくからの鶴岡継続調査があるので、実時間real timeと、年齢という見かけ時間apparent timeの分析も行った。さらに記憶時間memory timeを利用した新調査法を導入した。言語変化の発生と伝播の過程が分かる。 人々が意識しない「気づかない方言」について、各地の言い方の地域差が明らかになった。文法についても「ら抜き」「さ入れ」補助動詞多用など多くの変化が進行中である。語彙では、外来語の増加が著しい。敬語は民主化・平等化に向けて変化している。談話行動も変化が進んでいる。敬語や談話パターンについては、成人後採用が指摘され、加齢変化とも連動する。 得られた成果とデータは、各分担者の論文・口頭発表で公にされるとともに、CDやインターネットで電子ファイルとして公開されている。また国際発信を心がけ、国際会議でのワークショップ、学会誌の特集、個別論文、韓国・中国の学会誌への掲載が実現した。 コロナ禍のために学会出張を利用した打合せ会が不可能になり、現地調査が不能になった。リモートの学会参加や打合せを利用したが、一方でデータの分析と論文の執筆に集中できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の中、実地調査ができず、図書などの閲覧もできない。コロナ禍のために学会出張を利用した打合せ会が不可能になり、現地調査が不能になった。リモートの学会参加や打合せを利用したが、しかし過去のデータの分析は進み、データの分析と論文の執筆に集中できた。具体的な分析対象としては、以下の事実を明らかにした。 現代の公共用語の典型としての国会議会会議録・地方議会会議録の分析により、多様な言語現象の地域差が取り出された。多言語使用、アルファベット使用にも広げて、江戸時代、近代の長いタイムスパンの中に現代語を位置づけた。 方言集『浜荻』の追跡調査によって、江戸ことばの二重性、つまり社会階層と場面による相違が析出された。約400語の100年以上の年齢差のデータに多変量解析を適用し、歴史社会言語学観点から計量語彙論的分析を施した。 「気づかない方言」については、各地の言い方の地域差が明らかになった。音声について、音響分析により、子音の調音の変化が進行中と分かった。文法についても多くの変化が進行中である。語彙では、外来語の増加が著しい。敬語と談話行動も成人後採用が指摘され、加齢変化とも連動する。 得られた成果とデータは、各分担者の論文・口頭発表で公にされるとともに、紙出版の困難さから、CDやインターネットで電子ファイルとして公開されている。また国際発信を心がけ、ヨーロッパの国際会議でのワークショップ、学会誌の特集、個別論文、韓国・中国の学会誌への掲載が実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍収束後は、実地調査と、図書などの閲覧のための出張が増えるだろう。 予定したデータの分析も進展する。 本研究では、「公共用語に関する社会言語学的総合研究」という新テーマに関して、多様な分野で大量データを集積し、方言差を新たに分析する。①挑戦的萌芽研究以来共同研究を積み重ね、公共用語という切り口の有効性が確認された。②さらに視野を拡大して、社会言語学の各分野をおおうテーマを体系的に取り上げ、包括的な記述を目指す。斬新なテーマとして、公共場面での方言使用、談話としての方言差、方言景観、気づかない方言や音声変異などを取り上げる。最終的に成果を統合して、報告書・資料集として刊行する。③従来の社会言語学・方言学がふだんのくだけた私的場面での言語に関心を持ったのに対し、改まったHighの公的場面での言語使用に焦点をあてる点が新鮮といえる。日本の研究実績を外国語にも拡大する。④これまで約10年の研究の総まとめとして、統一的原理が貫徹していることを明らかにする。関連テーマを総合して関連づけ、公共用語の包括的理論を整備する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の中、実地調査ができず、図書などの閲覧もできなかった。リモートの学会参加や打合せを利用したが、しかし過去のデータの分析は進み、データの分析と論文の執筆に集中できた。 コロナ禍収束後は、実地調査と、図書などの閲覧のための出張が増えるだろう。国内学会・国際会議にも参加する。学会出張を利用した打合せ会が可能になり、現地調査が可能になった。予定したデータの分析も進展する。
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Research Products
(18 results)