2020 Fiscal Year Research-status Report
2種類の助動詞倒置文の基底構造と派生メカニズムの解明
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20K00656
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 宣美 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (90195371)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 助動詞倒置文 / 動詞としてのbe / 助動詞としてのbe / 動詞としての現在分詞being / 小節 / フェイズ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】本研究の目的は,仮説「beの非定形であるbeingは動詞で,beenは助動詞で,beは文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)の基底構造と派生メカニズムに対する従来の分析の妥当性を批判的に検証し,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案することにある。
【研究実施計画(令和2年度)】主語と助動詞の倒置が関わる倒置文(Yes/No疑問文,WH疑問文,付加疑問文,否定構成素前置等)の統語的・意味的特性の調査及び分析を行う。
【研究実績の概要】英語の助動詞構造として通常仮定されている構造の不備を指摘し,言語現象をより適切に捉えることのできる助動詞構造を提案した。英語の4種類の助動詞(法助動詞,完了のhave,進行のbe,受動のbe)のうち,本研究では,特に,beingの範疇を取り上げ,屈折接辞の一般化[屈折接辞を語幹に付加しても統語範疇が変わることはない]とbeの語彙的特性[beは助動詞のbeと動詞のbeに語彙的に区別される]から,beingの範疇を動詞として捉える必要があることを論じた。この分析を踏まえ,beingの範疇を助動詞として分析する提案に修正を加える必要があり,英語の助動詞構造において,法助動詞(TあるいはM)とPERFのhaveとPROGのbeenが助動詞で,beingは動詞であると分析しなければならないということを明らかにした。本研究では,非定形のbeenやbeingの範疇の決定は,1) beの語彙的特性[beは助動詞のbeと動詞のbeに語彙的に区別される],2) 屈折接辞の一般化[屈折接辞ingやenと併合される語幹のbeの範疇(動詞あるいは助動詞)が定形及び非定形のbeの範疇を決定する]の2つの仮説から導き出すことができることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究の目的】本研究の目的は,仮説「Beの非定形であるbeingは動詞で,beenは助動詞で,be は文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)の基底構造と派生メカニズムに対する従来の分析の妥当性を批判的に検証し,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案することにある。
【研究の目的】を達成するために,【研究実施計画(令和2年度)】に基づき,以下の研究を実施した。[1]主語と助動詞の倒置が関わる倒置文の統語的・意味的特性の調査及び分析をした。[2]主語と助動詞の倒置が関わる倒置文(Emonds 1976, Bowers 1981, Chomsky 1986, Radford 2016, Berwick & Stabler 2019等)の統語的・意味的特性の調査及び分析により,主語と助動詞の倒置が関わる倒置文の基底構造と派生メカニズムの解明に関わる統語的・意味的特性を抽出した。[3]令和2年度に得られた研究成果を,学術論文「動詞としての現在分詞being」(人文社会科学論叢第10号(弘前大学人文社会科学部))として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実施計画】令和3年度には,令和2年度に得られた研究成果を基にして,複数の助動詞が関わる倒置文(文体的倒置文,比較倒置文,as挿入節,so倒置文,比較置換,分詞前置,前置詞句置換等)の統語的・意味的特性の調査及び分析を行う。
【研究計画(令和3年度)】複数の助動詞が関わる倒置文の統語的・意味的特性の調査及び分析をする。複数の助動詞が関わる倒置文(Emonds 1976, Rochemont 1978, Quirk, et al. 1985, Huddleston & Pullum 2002, Culicover & Winkler 2008, Samko 2014, LaCara 2014, Park 2017, Ramchand 2018等)の統語的・意味的特性の調査及び分析により,複数の助動詞が関わる倒置文の基底構造と派生メカニズムの解明に関わる統語的・意味的特性を抽出する。
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Causes of Carryover |
【当該助成金が生じた状況】新型コロナウイルス感染症の感染の拡大のため,海外渡航が原則禁止あるいは延期が要請され,研究計画を実施するための国内外における出張を実施することができなかったことによる。
【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】令和3年度も,新型コロナウイルス感染症の拡大の収束が見込めるかは未確定ではあるが,1) ワクチン接種後に感染の拡大がある程度防止されることを期待して,国内外への出張により実施することが予定されている研究活動に備える,2) 当該研究課題に関する研究活動を推進するための文献(図書・雑誌・博士論文等)等の備品の幅広い購入に努める,3) オンラインで実施される学会や研究会等に積極的に参加することを計画している。
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Research Products
(1 results)