2020 Fiscal Year Research-status Report
日英語の程度表現の微細構造および不定語のシステムとの関係
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20K00660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 明 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70265487)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全称量化 / 程度表現の言語間変異 / 不定語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度で終了した課題の最終段階で手をつけた程度変項の全称量化が程度表現に関する類型論上どのような意味合いを持つかについて検討した論文の草稿執筆に着手した。日本語で見られる不定語がらみのこの現象については、前課題において極性に焦点を当てる形で論文にまとめたが、真の重要性は自然言語における程度修飾のシステムにおける位置づけにあり、不定語による程度修飾の全体像の解明は現課題の中核をなす。程度表現の微細構造にかかわる問題として、量化から手をつけた格好である。 程度変項の全称量化の分析は、量化そのものの観点から検討していく過程で、「わずか」のような最小量を示す表現が程度変項の全称量化を伴って名詞を修飾する場合について重要な帰結をもたらすことが判明した。それがデータ上正しいものであることが確認できたのも本年度の成果である。この点はまだ論文にまとめる段階には至っておらず、未発表であるが、程度変項の全称量化と似通った極性を示す英語の最上級の場合と比較することにより、日本語の全称量化では異なるデータパターンが観察されることを実証することが可能であるという見通しを得ている。この成果は研究計画立案の際に全く視野に入っていなかったもので、これまでまともな研究がほとんどなされていない不定語による程度修飾の領域が、普遍文法レベルでの程度の扱いについての知見を数多くもたらしてくれることを予感させるものである。 以上、コロナ禍のために研究時間の確保もままならない状態で課題1年目が経過したが、次年度以降へ発展させていく基礎を築くことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としてリストアップした現象をどのような順番で取り上げていくかについては、当初からそれほど計画を立てておらず、進展の見られるものから成果を刈り取っていくという方針なので、1年目にあらたな視点を得ることが出来たという点で満足のいくものである。一方、発表に至るものがなかったので、今後、それに力を入れる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
不定語による程度修飾のあらたな側面が最小量表現から見えてきたことで、順調な第一歩を踏み出すことが出来た。程度変項の全称量化は最小量表現の観点から英語の最上級ともさらに比較していくことになるので、最上級の理解にも貢献することになると見られる。これまで検討した不定語はごく限られたものでしかないので、2年目以降はそれ以外のものを順次取り上げていくことになる。 また、程度のスケール構造についてのあらたな問題も浮上したので、これも平行して考察していく。
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