2021 Fiscal Year Research-status Report
言語と音楽の接点における英語の好韻律性具現に関する実証的研究
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20K00662
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
服部 範子 三重大学, 人文学部, 教授 (00198764)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 英語 / 音声 / リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
一定の条件を課した時期に限定すると、言語リズムは音楽のリズムに反映するという仮説を検証するために、先行研究としてPatel & Daniele (2003)およびPatel (2008)を参考に、本年度は西洋音楽が日本に導入された明治期(1868-1912)において、英米から日本に紹介された英語の歌10曲が日本語に翻訳される過程でリズムの相違が生じていないかを分析し、もし相違があればその理由を考察した。理論的背景に音韻論のテクスト・セティングを置き、標準化配列間変動指標(nPVI)を用いて分析・検討を行った。 英語の話しことばのnPVIは、日本語の話しことばのnPVIより数値が大きいことはすでに複数の先行研究により実証されているので、仮説として、言語リズムと音楽リズムの相関関係で、英語の歌のnPVIの数値は、日本語のnPVIの数値と同等あるいはそれより大きいことが予想される。分析の結果、10曲中、5曲において、英語の歌のnPVIのほうが日本語版のnPVIより数値が大きく、4曲において、両者のnPVIは同等であった。唯一、1曲のみが仮説に反した。具体的に楽譜を検証してみると、1箇所において英語では4分音符のところ、日本語では2分音符が用いられており、唯一ここでnPVI数値が逆転する結果となったことが明らかになった。しかし、英語のテクスト・セティングに関して、Hayes & Kaun (1996)が指摘している点、すなわち、「音節の本来の音声長は、音節に割り当てられるビートの数に影響を与える」という指摘を考慮に入れると、唯一例外と思われた箇所は、英語の母音の本来の長さが短いために、音価の小さい音符が割り当てられたと説明可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
言語と音楽の接点におけるリズム研究の一つとして、標準化配列間変動指標を用いた研究を進め、年度末に論文を刊行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
分析対象とする楽曲を増やすとともに、本研究のもう一つの柱であるテクスト・セティングの観点から英語の好韻律性について研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により海外への学会参加が不可能となったため。 <使用計画>文献購入および成果発表に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)