2020 Fiscal Year Research-status Report
時間と相の副詞の意味論・語用論に関する日英対照研究
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20K00665
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
西山 淳子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (90469130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 意味論 / 語用論 / 日本語 / 英語 / 副詞 / 時制 / 相 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語と英語の状態を修飾する時間と相の副詞の中から、課題初年度の令和2年度は、現在の時の副詞 “now”と「いま」の直示用法に注目し、対照研究を行った。現在の時を表す英語の“now”は、直示用法で発話時間を指し、物語の談話以外では、過去形と共起すると語用論的に不適格となる。また、“now”は、現在時制では状態事象のみと共起し、修飾する記述事象の状態性の指標の一つともなる。一方、日本語で対応する副詞「いま」は、発話時間を中心としながらも、近い過去や近い未来の時間を含む幅のある時間を指すとされている。直示用法の「いま」は、物語の談話外でも、過去形とも非過去形とも共起可能で、近い過去や近い未来の出来事を修飾するが、状態性を示す指標とはならない。本課題では、“now”と「いま」が表す発話時間は、その時間範囲に違いはなく、意味論的に同じであると考えた。それではなぜ「いま」は近い過去や近い未来の出来事とも共起しやすく、“now”では不自然さが伴うのかについて、過去時制の出来事文による参照時間または基準時(reference time)の更新(Partee 1984、Kamp and Reyle 1993)を物語談話以外の過去時制文にも応用し、そして、現在の時の副詞が共起する文の出来事記述の状態性条件(Michaelis 1998, Altshuler 2016,2020) を踏まえて、両言語の時制・相体系の構造的な違いとの意味論・語用論的相互作用から、これらの副詞の表す時間の継続時間の解釈の違いが説明可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、学会で研究発表を行うとしていたが、現在、学会発表のための応募中の段階である。そのため、初年度の研究は進めたが、研究成果の発表については未発表であり、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、学会に応募し、論文として発表する。そして、時制や相と関わる他の副詞の日英対照研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染予防措置のため、各学会や研究会が全てリモート開催となり、旅費が未使用となり、また、開催形式の混乱等から学会への応募も見合わせ、令和3年度以降に旅費を使用することにしたため。
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