2021 Fiscal Year Research-status Report
時間と相の副詞の意味論・語用論に関する日英対照研究
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20K00665
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
西山 淳子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (90469130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 意味論 / 時と相の副詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度に続き、日本語と英語の状態事象を修飾する時間と相の副詞の振る舞いを調査した。令和2年度、日英語の現在を表す時の副詞の直示的用法を比較し、意味論的に統一的に捉えたが、令和3年度は、照応的用法やその他の用法についても対照比較を行なった。英語の現在の時を表す副詞には、物語の過去の文脈の照応的用法や談話機能を持つ用法があり、直示用法の時間的な意味定義から意味論的または語用論的に説明できることが分かっている(西山 2018)。日本語の副詞「いま」にも、直示的用法、照応的用法、談話標識の用法が見られるが(工藤 1995)、英語の“now”と異なり、述語の状態性の指標とならず(Nishiyama 2006)、談話標識としての用法も限られる。だが、“now”と「いま」の直示的用法の分析を応用することで、限定的な分布だが、それらについても時間的な定義から意味論・語用論的に同様な説明が一定可能であることが分かった。 状態を修飾する英語と日本語の相の副詞については、まだ対照比較研究の途上にある。英語の副詞の“already”と“still”は、非状態と状態間の時間的推移を語用論的前提または含意として示すことが知られ、出来事と共起する場合は、スカラー演算子として、または、意味論的不整合のために 、“already”は過去形から完了形への再解釈を導くとされる(Michaelis 1996, De Swart 2013)。代替意味論では、これらを焦点化副詞として、共起する事象の状態・出来事に関わらず、諸用法を統一的に、分析可能としている(Krifka 2000)。これらを日本語の対応する相の副詞の時間的用法に応用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果が未発表である。海外の学会に応募したが、発表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コーパスデータを利用するが、量的調査は行わず、意味論・語用論分析をまとめ、論文や学会で発表し、フィードバックを求める。また、意味論・語用論以外の言語学分野(認知言語学)での直示・照応表現へのアプローチも参照する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染予防措置のための各学会や研究会のリモート開催が続き、旅費が未使用となり、また、開催形式の混乱等から学会への応募も見合わせなどが続いたため、令和4年度以降に旅費や論文出版費用、海外の研究者の招待講演の謝礼などに使用する予定である。
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