2022 Fiscal Year Research-status Report
時間と相の副詞の意味論・語用論に関する日英対照研究
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20K00665
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
西山 淳子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (90469130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 時制 / アスペクト / 現在の時の副詞 / 英語 / 日本語 / 意味論 / 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、引き続き、英語と日本語の現在の時を表す副詞についての意味論・語用論分析を行い、学会と論文での発表を行った。英語のnowは、過去の文脈や埋め込み文以外、つまり、直示的な用法では、過去形の文とは共起しないが、「いま」は単純な過去時制文とも共起し、近い過去と現在の事象のどちらも修飾する。過去の文脈で現れる英語のnowは、照応関係や分節談話表示理論の談話関係から分析されてきたが(Kamp 1971, Kamp and Reyle 1993, Hunter 2012, Altshuler 2016, 2020)、これらの分析は対象とする用法を限定しており、また、日本語の「いま」と英語のnowの直示用法における振る舞いの違いを説明しない。本課題研究では、直示用法では二つの時制の文と共起する「いま」を多義と見做さず、nowと「いま」に共通する意味分析を基に、時制と相のシステムの違いに伴って日本語と英語で異なって現れる尺度推意を利用し、直示用法におけるこれらの違いを語用論的に説明できることを示した。しかし、本分析で提案した意味定義の分析対象もまた、過去と現在の時間解釈を持つnowと「いま」の用法に限定しており、未分析の用法を課題として残している。また、当初予定の日本語と英語の相の副詞の比較対照研究も進めたいと考える。 また、日本英語学会第15回国際春季フォーラムでは、米国からLeonard Talmy氏を招き、認知言語学の視点から直示性に関する特別講演を共催した。さらに、同学会の第40回大会では日本語と英語の時制についてのシンポジウムを共催し、海外から講師を招き、議論・意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の時の副詞に焦点をおき、日本語と英語の比較対照研究を行ったが、まだ分析できていない現象があり、課題を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語と英語の相の副詞の比較対照研究を行う。そして、現在の時の副詞の意味についても、再度検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染予防措置のための各学会や研究会のリモート開催が続き、また、学会への応募も見合わせることが多くなり、旅費が未使用となった。 令和5年度分については、対面での学会の実施が再開され始めているため、学会参加のための旅費や移動用のコンピュータ関連機器の購入に使用する。
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