2021 Fiscal Year Research-status Report
機能範疇を伴う依存関係の包括的研究:「構造」「意味」「語用」の観点から
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20K00670
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小畑 美貴 法政大学, 生命科学部, 准教授 (80581694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 千鶴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90795642)
谷 智子 東洋大学, 情報連携学部, 助教 (80638205) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 併合 / ラベル / 削除 / 焦点移動 / 分裂文 / 人称詞 / 認知モード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、母語における「構造構築及び言語使用の仕組み」を明らかにすることにある。特に①機能範疇を伴う依存関係に注目し、構造構築の要となる操作である「併合(Merge)」がどのように統語表示を生成し、その表示がインターフェイスにおいてどのように解釈を受けるか、「構造」「意味」「語用」の3視点より包括的な研究を行う。②更に①の研究成果を、ケーボ・ベルデクレオール(Carbo Verde Creole)を含む多様な言語データによって多角的に検証し、最終的には個別言語間差異を統一的に捉える言語システムの構築を目指す。 上記の研究目的を達成する為に、2021年度は以下の3点を中心に研究を行った。第一に、英語の剥ぎ取り構文に注目し、その統語表示は焦点移動と削除から生成されるという分析を提案した。更に日本語の分裂文が焦点移動を含むという分析の妥当性とその帰結の考察を行った(中尾)。第二に、2020年度までの研究を発展させ,日本語とフランス語の広告表現における人称詞に注目し,認知言語学における2つの認知モード(Iモード,Dモード)に関連させて分析,考察を行った(谷)。第三に、日本語分裂文における「主格制限」に注目し、ラベル付けアルゴリズム及び格付与のタイミングによって、なぜ日本語分裂文では主格制限が観察されるのか、また複数の要素が焦点移動される場合は主格制限が消失するのかの説明を行った。また、ラベルがインターフェイスにおける意味の演算において一定の役割を担っている可能性を示した(中尾、小畑)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、招待講演、学会発表、論文出版などによる成果発表を複数行っており、プロジェクトは順調に進んでいると考えられる。2020年度の研究を更に発展させることで、2021年度は新たな研究成果を得られており、今後も更なる進展が期待できると思われる。また、研究代表者と分担者との共同研究も一定の成果をあげており、個々の研究だけでなく、プロジェクト全体としてのまとまりが、より増してきているように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は主に以下の2点を中心に研究を進めて行く予定である。第一に、2021度までの研究で扱ってきた剥ぎ取り構文と分裂文に共通して含まれる焦点移動という操作についての理解を深めるため、その性質について更に検討する予定である。特に、wh移動による島の制約の違反(関係詞からの抜き出しなど、本来は語句の移動を許さない環境からの移動)は削除により緩和されるのに対し、焦点移動による違反は緩和されないという差異について、先行研究よりも妥当性の高い説明を与えられるかを検討したいと考えている(中尾)。第二に、インターフェイスにおける意味や音の解釈において役割を担うと考えられているラベルが決定される仕組みを更に掘り下げて検討する予定である。いくつかの現象において、複数のラベルが付与されうる環境が存在するが、そのような場合に、どのようにして片方を選択するのか、ラベルは「主要部を探す」ことで決定されると考えられているが、主要部の内部まで探査している可能性を考察する予定である(小畑)。また、2020年度同様、中尾、小畑による共同研究を行うことで、互いの研究成果を更に発展させ、「構造」「意味」「語用」の包括的研究の達成を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大の影響で、国内学会及び国際学会共が全てオンライン化され、会費や旅費などの支出の必要がなかったことにより次年度使用額が生じたと考えられる。今後どのようになるかは予測できないが、海外出張ができるようになれば、データ収集などに出かけて旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)