2021 Fiscal Year Research-status Report
A sociophonetic study of accents of English considering their local history of English
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20K00684
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三浦 弘 専修大学, 文学部, 教授 (00239188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音声・音韻 / 英語の多様性 / 社会音声学 / 発音変種 / 母音推移 / 歴史音韻論 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリスの標準英語発音(GB)は産業革命後に出現した中産階級(工場所有者など)が自らの英語を格式の高いものしたいという無意識によって変化した。そして20世紀後半から大衆化し始めたGBにはロンドン労働者階級の発音(コックニー)の吸収が特徴的である。これは社会的動機付けによる変化の好例である。「Lの母音化」という語末のLを発音するときに舌先を歯茎に付けないで「ウ」で代用する方法もGBには含まれる。関連して地域方言に目を向けると,ブリストル方言には「ブリストルのL」と呼ばれるideaやareaの語末にLを挿入すると言われる特徴がある。しかし実際にはLの挿入ではなく,語末の母音が「ウ」のように発音されている。方言の差異は無意識の選択によって生じる。 15世紀から17世紀に生じた「大母音推移」も母音が連鎖的に推移したのは「エ・オ」の領域と「イ・ウ」の領域の母音だけで,「ア」の高さ領域の変化は母音の「融合」であり,二重母音の変化は「類音」(同一母音の方言的変種)であるとみなす説が出てきた。この考え方を参考にして融合と類音の歴史的な経緯の地域差に着目した。 また現在のアメリカ英語教材の多くはthoughtの母音を「アー」で発音している。ところが英和辞典の発音記号は「オー」が先に表記されていることが多い。これにも地域的な変種と社会情勢が関連している。英和辞典の発音は元々20世紀半ばのオハイオ州出身者(J. S. ケニヨンの文献等)の発音に基づいているが,現在のアメリカ英語では西海岸の発音が主流となっている。 あいまい母音についても英米の標準発音に相違が見られた。アメリカ英語の方が「エ」のように発音される傾向が強い。-enceと-entを含む単語のあいまい母音を音響分析(フォルマント周波数を測定)して,バーク尺度という公式を用いてフォルマントを正規化(個人の口腔の違いを調整)をして考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外渡航による現地調査でオリジナルデータが入手できないまま2年が経過した。そのため文献研究による考察,および既存の音声データの再分析が中心となっている。しかし,研究課題に挙げて着目している英語の地域的変遷史と歴史音韻論の研究は机上で続けられるのでそれなりの成果は現れている。社会音声学という音響分析を伴う発音変種(方言音声)の研究のために今後数回の海外渡航を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度にコロナの感染状況が改善して海外渡航が自由になれば,まずはスコットランド高地地方での調査を実施する。スコットランド英語は南東部と北西部では異なり,北西部のスコットランド高地地方とヘブリディーズ諸島にはゲール語(ケルト系)が残っている。南東部のスコットランド低地地方の英語は平成25年度の科研費で調査しているので,そのデータと比較して共通項を導き出すこともできる。 コロナの影響があるために従来のように地元住民宅を訪問してインタビューすることは難しく,スコットランド高地地方には研究拠点となる大学もないので,ゲール語保存団体や高地地方文化の保存団体等に協力を依頼する予定である。 当初の研究実施計画にあるチャネル諸島での調査には,イギリスとフランス両国に入国しなければならないので,現状では無理かもしれない。しかし,イングランド地域にも未調査の方言は多々あるので,軌道修正をしながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
本研究課題経費の交付申請は主に海外調査のための旅費と人件費・謝金であるが,新型コロナウィルス感染症の世界的流行のために,初年度の令和2年度から令和3年度の2年間はイギリスへの渡航ができなかったので,多額の助成金が未使用となっている。令和4年度にはイギリスでの現地調査(音声収録)が可能となれば,遅れを取り戻す所存である。しかし,令和4年度が本研究課題の最終年度であるために,年度末に補助事業期間の延長を申請する可能性は高い。
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Research Products
(5 results)