2022 Fiscal Year Research-status Report
A sociophonetic study of accents of English considering their local history of English
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20K00684
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三浦 弘 専修大学, 文学部, 教授 (00239188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音声・音韻 / 英語の多様性 / 社会音声学 / 発音変種 / フォルマント周波数 / 母音推移 / 歴史音韻論 / チャネル諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年8月から9月にかけて渡英し,チャネル諸島のジャージー島とガーンジー島にて適切な被験者を探して音声収録を行った。渡航前には文献研究により地域の歴史と言語の音声特徴を研究し,調査のための音読用語彙リスト作成した。帰国後には収録した音声データを音声分析ソフトで音響的に分析し,現在の音素体系を考察した。先行研究との違いや地域の言語的変遷史による特徴(ノルマンフランス語の影響や英語の流入経緯など)を考察した。その結果は,令和4年10月30日の日本実践英語音声学会中部支部第4回研究大会にて報告させていただいた。そしてその口頭発表に加筆をして同学会の機関誌に投稿した。 Ramisch (2004) の先行研究と現在の音声データを比べるとチャネル諸島の英語発音がかなり変わってきていることがわかった。傾向としてはイギリス全土に広がっている反方言化がこれらフランス沿岸地域にまで進行していて,一般イギリス英語(GB)の影響が顕著に見られた。しかし,これまでチャネル諸島英語と一括りにまとめられてきたジャージー英語とガーンジー英語にも相違点があることがわかった。 もう一点取り組んだテーマはSTRUT母音の英語史的な成立過程(音素の変容)である。一般アメリカ英語(GA)のSTRUT母音はGBのSTRUT母音とは音価が異なるにもかかわらず,英語教育では両方言発音で同一の発音記号が用いられている。この問題を令和4年12月17日の日本実践英語音声学会第4回研究大会(全国大会)の講演テーマの一部として,英語音韻史及び英学史におけるこの母音の解釈を踏まえて,両英語方言(GBとGA)の音声を集め,音響的に分析し,最も適切な発音記号を考察した。そしてその内容は所属機関の研究紀要に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間前半の2年間はコロナウィルス感染症の流行のために海外渡航による現地調査で音声データが入手できなかった。社会音声学という音響分析を伴う発音変種(方言音声)の研究には厳しい状況であった。しかし,3年目の令和4年度にはイギリスのチャネル諸島にて音声収録ができて,渡航前に準備していた文献研究も活かして,研究課題としている英語の地域的変遷史を融合させた社会音声学が実践可能となった。同時に既存の音声データを利用した歴史音韻論に関連した研究も学会で報告できる程度までまとまった。 当初の研究期間は3年間であったが,おかけざまで補助事業期間延長が承認されたので,令和5年度で遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間を延長していただいた令和5年度には,まず当初の調査予定であったスコットランド高地地方での調査を実施する。スコットランド英語は南東部と北西部では異なり,北西部のスコットランド高地地方とヘブリディーズ諸島にはゲール語(ケルト系)が残っている。南東部のスコットランド低地地方の英語は平成25年度の科研費で調査しているので,そのデータと比較して共通項を導き出すこともできると思われる。高地地方のスコットランド英語と南東部のスコットランド英語,つまりいわゆるスコッツ語では共通の特徴もあり,それはイングランドの英語とは異なるというのが直感的な仮説である。しかし,高地地方のスコットランド英語にゲール語の影響がどうように保持されているのかを追究することが本研究課題の主たる目的である。 上記の調査を夏休み期間に実施できたとしても,それはまだ2回目の調査なので,もう1回調査のために海外渡航ができる研究費が残ると思われる。年度末までに校務の事情が許されれば,令和4年度までに少しずつ準備してきたニュージーランド英語の調査も行う予定である。近年のニュージーランドの若者世代の英語発音が急速に変化している状況を分析すれば,イギリスにおける言語接触とは別の要因による英語音声の音韻変化に関する興味深い規則が見出せるかもしれないと思っている。
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Causes of Carryover |
本研究課題経費の交付申請は主に海外調査のための旅費と人件費・謝金であるが,新型コロナウィルス感染症の世界的流行のために,初年度からの2年間(令和2年度と令和3年度)は海外渡航ができなかったので,多額の助成金が未使用となっていた。令和4年度はイギリスへの渡航ができたので,ジャージー島とガーンジー島で現地調査(音声収録)を実施したが,少なくとももう1回,できれば2回の現地調査を令和5年度に行いたいと計画している。
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Research Products
(7 results)