2023 Fiscal Year Annual Research Report
『聖グースラーク伝』ラテン語・古英語のテキスト校訂:文体の比較研究に向けて
Project/Area Number |
20K00687
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石黒 太郎 明治大学, 商学部, 専任教授 (60296548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古英語 / 中世初期イングランド / 聖人伝 / ラテン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世初期イングランド、8世紀前半に成立したと考えられているラテン語の聖人伝『聖グースラーク伝』は13写本にそのテキストが残っている。この原典はおそらく9世紀末に英語に翻訳され、そのテキストが10世紀と11世紀のふたつの写本に残っている。本作品は、古英語の翻訳作品の中では珍しく、対応する箇所がラテン語・古英語の双方に見出せる比較的忠実な翻訳である。本研究ではまず語学的な比較研究に耐えうる、ラテン語原典と古英語散文訳の現代的な校訂テキストを作成したうえで、古英語散文訳の文体がラテン語から受けた影響を調査した。 コロナ禍で当初の計画の多くを断念せざるを得なかったものの、本研究課題の主要目的であるラテン語、古英語の校訂テキストを作成することは研究期間内に終えることができ、それをもとにロンドン大学名誉教授 Jane Roberts 氏と共著で校訂本を2025年に出版できることとなった。提出原稿はほぼ完成しており、研究期間の終了時点で、すでに最終チェックに入っている。 最終年度のほとんどをこの原稿作成に費やしたものの、文体の比較研究の成果を論考にまとめることもできた。聖グースラークを主題とした第一線の研究者による論文集に対する書評論文も、文体研究に触れている部分が多く、本研究課題の成果として挙げることができる。また上記のテキスト校訂の過程から得ることができた、ラテン語原典と古英語訳との間にみられる文体の影響について報告する論考を提出し、2024年度に刊行予定である。
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