2021 Fiscal Year Research-status Report
Grammatical Status of Realization Patterns and Cross-Linguistic Variations: A Competition-Theoretic Approach
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20K00688
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Research Institution | Niigata Agro-Food University |
Principal Investigator |
西牧 和也 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 講師 (10734189)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 具現パターン / (非) 顕在性 / 類型論的相違 / 形態部門と統語部門のインターフェイス / 競合理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
文法機能・範疇の具現方法には、非顕在的具現と顕在的具現という2つのパターンが認められる。本研究の目的は、競合理論という理論的枠組みを採用して、その選択が個別言語ごとに決定されていることを明らかにし、具現パターンの選択及びその言語間相違を文法内に適切に位置づけることである。競合理論によれば、統語部門と形態部門は構造具現をめぐって競合し、言語は統語部門での具現を優先する統語優先言語と形態部門での具現を優先する形態優先言語に大別されるという。昨年度は、英語などの統語優先言語では、非顕在的具現が選択され、一方、日本語などの形態優先言語では顕在的具現が選択されるという記述的一般化を導いた。今年度は、この記述的一般化に対して原理的説明を与えた。より具体的には、日英語に焦点を当てることで、なぜ、上述のような対応関係になるのか、その根本的理由を明らかにした。競合理論に基けば、非顕在的・顕在的具現の選択は、日英語の具現パターンに適うものでなければならない。英語が統語優先言語であり、日本語が形態優先言語であるとすれば、英語では、非顕在的具現の選択が、統語的具現に適うものであり、日本語では、顕在的具現の選択が、形態的具現に適うものであるということになる。統語優先言語では、2つの語彙項目の結合を句として具現することで、その統語的具現の要請が満たされる。その具現において、2つの語彙項目のうち、どちらか1つが、非顕在的であっても、句は形成されるので、統語的具現に支障をきたさない。よって、統語優先言語では、非顕在的具現が選択可能となる。これに対して、形態優先言語では、その形態的具現の要請を満すには、2つの語彙項目の結合は複合語として具現されなければならない。複合語の形成には、顕在的な語彙項目が必要になる。従って、形態優先言語では、顕在的具現が選択されるということになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度において、競合理論に基づく本格的な日英語対照研究を行った。その結果、日本語などの形態優先言語では顕在的具現が選択されるという記述的一般化が導かれた。今年度の目的は、この記述的一般化に対して原理的説明を与えることであった。日英語に焦点を当て、分析を行った結果、なぜ、統語優先言語では、非顕在的具現が選択され、形態優先言語では、顕在的具現が選択されるのか、その根本的理由を明らかにすることができた。つまり、英語において、非顕在的具現が選択されるのは、この選択が統語的具現に適うからであり、一方、日本語において、顕在的具現が選択されるのは、それが形態的具現に適うからであるということが論証された。この意味において、当初の目的を達成したと言える。その他、今年度は、競合理論で捉えるべき、新たな現象を掘り起こし、分析することができた。これは、競合理論の適用範囲を更に広げることにつながった。また、今年度の研究により、英語は、顕在的具現を選択する言語から非顕在的具現を選択する言語に変化して行ったこと、そして、この史的変化も競合理論に基づいて説明できることがわかった。このように、本年度においては、当初の目的を上回る研究成果が得られた。そして、いずれの研究成果も、論文、研究発表の形で、公表することができた。以上を踏まえると、本年度の研究は、当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
統語優先言語では、非顕在的具現が選択され、一方、形態優先言語では顕在的具現が選択されるという記述的一般化に対して、引き続き、原理的説明を与える。これまでの日英語対照研究から、非顕在的具現と顕在的具現で日英語が対立することが判明している文法機能・範疇に対して、順次、競合理論の観点から、今年度と同様の分析を加えていく。そして、英語において、非顕在的具現が選択されるのは、この選択が統語的具現に適うからであり、一方、日本語において、顕在的具現が選択されるのは、それが形態的具現に適うからであるという説明が可能であるかどうか検証し、今年度、確立した理論の妥当性を更に高める。また、当初の計画通り、日英語以外の言語にも、同様な分析が可能かどうかを調査し、通言語的な応用可能性を探る。研究成果は、研究発表あるいは論文投稿という形で公表していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大の影響により、参加を検討していた学会が開催中止、あるいは、オンラインでの開催となり、全く、旅費が発生しなかったため。
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[Book] English Noun Phrases from a Functional-Cognitive Perspective: Current Issues2022
Author(s)
Kristin Davidse, Fuyo Osawa, Rahel Oppliger, Charlotte Maekelberghe, Marta Carretero, Marianne Hundt, Evelien Kezer, Elnora ten Wolde, Melanie J. Bell and Carmen Portero Munoz, Lotte Sommerer, Kazuya Nishimaki
Total Pages
433 (395-427)
Publisher
John Benjamins
ISBN
9789027210173