2020 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動型学習を取り入れた文法教育に関する基礎的研究
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20K00704
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀 恵子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70420809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 在鎬 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (20450695)
ヨフコバ四位 エレオノラ 富山大学, 学術研究部教養教育学系, 教授 (10512410)
加藤 恵梨 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (70770311)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Data-Driven Learning / データ駆動型学習 / 実践授業 / コーパス / 学習者コーパス / 文法 / 日本語教育 / 機能語用例文データベース「はごろも」 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍による学習者の減少,教材,授業形態の変更などによって,当初予定した対面クラスでのDDLを取り入れた実践授業は困難になった。そこで,研究代表者,分担者各々の教育現場の実情に合わせた調査,実践を行った。 研究代表者はクラス環境ではなく調査協力者を募り,実験調査を実施した。調査内容は,授業で扱った教材で使われている文法項目についてDDLを取り入れた自律学習によって例文作成をさせ,文法の正確さを分析するとともに,DDLに関する意識調査を行うものである。その結果,対象者は,授業で扱った文法項目については正確な例文が作成できるが,教科書に出てきても文法項目として取り上げられていない項目については例文の正確さが下がることが明らかになった。また,バ条件文/ト条件文の文末制約については不的確な例文が見られた。母語話者コーパスから学ぶDDLでは肯定証拠は得られるが,文末制約に違反してはいけないという否定証拠は得られないためであると考えられる。そのため,学習者コーパスから正用,誤用の両者を示す必要性があることを明らかにした。また研究分担者は,少人数クラスで来日時期も遅れたため,パイロット的に調査を行った。これらの調査で得られた学習者の例文は,今後機能語用例文データベース「はごろも」に収録していく。 一方,DDLに関する公開シンポジウムをオンラインで開くことができた。すでにDDLを取り入れている英語教育の理念や事例の紹介,日本語教育におけるDDLを取り入れた語彙教育の教材開発に関する発表などを取り上げた。シンポジウムは当初の対面からzoom開催に変更したことで海外,国内の遠隔地からの参加が可能になり,100名近くの参加者を得ることができた。そのため,各テーマに関して活発な議論を交わすことができた。また,DDLが知られていなかった日本語教育関係者の間に興味を引くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は世界的なコロナ禍によって,当初の計画であった実験授業の実施が遅れ,大幅な見直しを余儀なくされた。 申請時は,対面授業においてDDLを取り入れ,①難易度の異なる例文を提示し,学習者レベルの違いによって理解と,作成する例文にどのような差異があるか,②DDLの授業への取り入れ方に関して,協働学習を主とする授業タイプと自律学習を主とするタイプによって作成された学習者の例文にどのような違いがあるか,の2点を分析する予定であった。また,作成された学習者の例文を機能語用例文データベース「はごろも」に取り入れる予定であった。 しかし,コロナ禍によって,短期留学の学習者が来日できず,クラスによっては学習者が減少あるいはクラスが消滅した場合もあった。また,オンライン授業に変更された場合も,そのことによる教材の変更,クラス形態の変更などから,DDLを実施するのが困難で,できたクラスでも実施は年度後半のみで,対象者も少人数になった。それらの影響で,計画通りには進められなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,研究代表者,分担者のそれぞれの授業形態(オンライン授業か対面授業か,ハイフレックスか(オンライン授業と対面授業を組み合わせて実施))や,規模等に柔軟に対応しながら,その時々の学習者の学習環境にあわせて,①実験授業の実施,②授業の効果を評価,③学習者の用例収集,分析を行う。 ①実験授業の実施:授業は実施できる形態,規模等に大きく左右されるため,柔軟に授業形態にあわせてDDLの導入や自律学習におけるDDLの観点からの支援を行う。②授業の効果の評価:実施前後の理解/産出の正確さの測定,例文作成のしやすさや機能語用例文データベース「はごろも」の利用に関するアンケート調査などを実施する。③学習者の用例収集,分析:DDL導入後,学習者が作成した例文を収集,順次研究代表者と分担者によって正誤評価を行い,必要に応じて修正などを加え,機能語用例文データベース「はごろも」の学習者用例に加えていく。先行研究と2020年度における調査において,学習者は,同じ学習者という立場で作成された例文をよく参照していることが明らかになった。そこで,DDL導入によって得られた学習者の用例をコーパス化し,機能語用例文データベース「はごろも」に加えて行くことが本研究課題の柱の一つである。また,利用者のうち特に学習者からの要望の多い用例の多言語翻訳に着手する。 2021年度は中国語,韓国語を行う予定である。2022年度:最終年度には,実験授業から得られた学習者コーパスを機能語用例文データベース「はごろも」に実装する。また実験授業の効果を,DDLの取り入れ方,学習者のレベルなどの要因を踏まえた上で評価する。さらに,実験授業をモデル化し,授業形態やDDLの取り入れ方の違いを踏まえて,「DDLを取り入れた授業」のワークショップなどを開く。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって海外で開催される予定であった国際会議がすべてオンライン開催となったことで,予定していた渡航費,滞在費を使用することがなかった。また,この状況は2021年度にも変化がないと思われる。すでに多くの国際会議が次回もオンライン開催となることを決定している。 そこで,多くの学習者からの要望がある機能語用例文データベース「はごろも」の多言語化に使用する。具体的には現在英語訳のみを載せている「見出し語」「意味」に加えて,「意味大分類」「くわしい意味記述」についても,中国語訳を付けることを検討する。
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