2021 Fiscal Year Research-status Report
「日本とつながって生きる」選択に見る日本語教育の新時代ー元留学生の自己実現―
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20K00707
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
丸山 千歌 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30323942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 伊久美 国際基督教大学, 教養学部, 課程上級准教授 (60296796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 日本語学習者 / 日本社会 / 日本文化 / キャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現在も日本とつながって生きる、日本語学習経験を持つ元留学生を対象に、PAC分析法とTEAを活用し、日本語学習や日本への留学を通じた日本留学体験・日本語学習の位置づけの変容とその要因について、文化心理学の知見を取り入れて分析を行い、類型化を図ることを目的としている。 2021年度の研究活動は主に2点に整理できる。1点目は、DEの基盤となる文化心理学に関する理論的側面の研究を進めるとともに、多声モデル生成法に基づいてTEAにおけるモデル化に取り組んだことである。代表者らの一連の研究は元留学生である協力者の人生の径路や等至点(Equifinality Point: EFP)や分岐点(Bifurcation Point: BFP)などを明らかにしたが、新たな研究課題が出ていた。一つはBFPに関する分析で、どのような葛藤の中でいかなるメカニズムから径路がEFPに向けて収斂していくかをより微細に解明する必要があるということである。 もう一つは各考察が、日高(2021)が指摘する「ビックワード(非常に抽象的で、なんでも含めてしまう言葉)におさまりがちで、社会実装としての機能を高める展開が求められるということである。後者は質的研究において「いかにモデル化するか」という課題であるとも言える。この点を検討する上で、やまだ(2020)の多声モデル生成法は示唆に富んでいる。2021年度は、上述の課題2点を問いとしてValsiner(2016)のTriple Gegenstand理論を参照しながら分岐点における葛藤のメカニズムを分析し、多声モデル生成法に基づいてTEAにおけるモデル化に取り組んだ。もう1点は、コロナ禍の影響を受けて2020年度に進めることができなかった調査協力者の選定およびインタビューを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を引き続き受け、本務のエフォート率が高かったため。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で調査が予定通り進まない中で、研究計画や課題の見直しができたことで多声モデル生成法に基づいてTEAにおけるモデル化という新たな研究課題に取り組むことができている。2022年度もこの課題に取り組みつつ、当初の計画に沿って、調査協力者の選定およびインタビュー、分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、調査研究旅費、データ収集用旅費の使用を見送った。移動が可能な状況になったら、旅費を伴う研究活動を再開する予定である。次年度の研究方針として、モデルII生成の研究と同時進行で、2021年度に再開した新たな調査を継続する。順次成果の一部を学会などで発表するとともに、新規の調査協力者へのインタビューを実施、分析を行っていく。
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