2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Resolution of Regional Disparity in Japanese Language Education
Project/Area Number |
20K00712
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
新矢 麻紀子 大阪産業大学, 国際学部, 教授 (70389203)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地域日本語教育 / 地域格差 / 日本語教室空白地域 / 日本語教育保障 / 日本語教育推進法 / 自治体の施策 / 文化庁 / 生活者としての外国人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「生活者としての外国人」への日本語教育の地域格差、特に都鄙格差の実情を明らかにし、解決に向けた施策や方法論を提案することにある。地域日本語教室等は都市部に集中し、地方公共団体の2/3が日本語教室が不在の「空白地域」である。日本語教育推進法が成立したが、地方在住外国人の日本語学習権保障を視野に入れて議論が進められなければ、地域格差は一層拡大する。 2020年度はコロナ感染症拡大によりフィールド調査がほとんど実施できず、文献研究中心となった。 数少ない現地調査として兵庫県国際交流協会(HIA)と和歌山県K市を訪問した。兵庫県は日本語教育が充実し「空白地域」がない。HIAでは3名の日本語教育コーディネーターに聞き取りを行った。文化庁「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」により多様な施策を展開していたが、地方部では人材育成に課題があることがわかった。K市では近畿大学服部教授の協力を得てK市役所を訪問した。多文化共生を担う地域創生課は、外国人支援の必要性を理解しつつも、経験不足からか事業立案等には未だ消極的である。商工労働課は、人口流出による地元産業衰退への危機感から、日本人・外国人問わず人材受け入れに前向きで、地元企業や研究者とも連携を推進する機動性や、多文化共生の地域づくりに向けた意識や努力が確認できた。しかし、経済の論理以外の人権的な視点に根差しているかを明らかにするにはさらなる研究が必要である。 愛媛県U市調査は訪問が叶わずオンラインでの会議参加や教室見学にて実施した。文化庁「地域日本語教育スタートアッププログラム」1年目を順調に終え、2020年度の日本語教室試行開始直後でのコロナ感染拡大により、教室活動や人材育成等事業が停滞した。その中で行われたオンライン教室開設やFacebookでの情報発信等は、将来のリソースになる可能性を秘めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究プロジェクトは、日本各地に赴き現地でのフィールド調査によって推進される計画であった(研究計画調書に記述あり)。しかしながら、プロジェクト1年目である2020年度が、新型コロナウィルス感染症拡大により外出制限がかかり、現地でのフィールドワークがほとんど実施できず、新しいデータの収集が限定的となったため、研究に大きく遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス感染症が終息し、現地でのフィールド調査が可能となれば、日本各地での現地調査を実施する予定である。日本語教育の地域格差、特に都鄙格差を調べることが本研究の目的であるので、地方部の外国人散在地域の状況を中心に調査することを計画している。 現在の計画では、2021-2022年度において、北海道、東北、関東、北陸、中部、中国、九州の各地方において、それぞれ1自治体を選定する。選定先の候補としては、可能であれば、文化庁「地域日本語教育スタートアッププログラム」を実施中か、あるいは完了した自治体を検討している。なぜならば、本研究では、日本語教室空白地域であった自治体を日本語教室開設に導き、推進した要因が何なのかを明らかにしたいからである。それには、「地域日本語教育スタートアッププログラム」実施自治体が教室設置を実現することになった経緯を具に調べることが最も適切かつ妥当な方法であると考えられる。さらに、今年度までに既に調査を開始している、近畿では兵庫県と和歌山県(K市)、四国ではスタートアッププログラム実施中の愛媛県(U市)でも継続して調査を行う予定である。研究方法としては、自治体施策等の文献調査を実施したうえで、現地に赴き、自治体の外国人関連部門やその他公的機関、NPO等への聞き取り、外国人当事者への聞き取りを行うとともに、外国人支援に携わる住民や一般の地域住民の声も聞く。 しかしながら、2021年度もコロナウィルス感染症拡大は留まることを知らず、このままの状況が続けば、今年度もフィールドワークが実施不可能になる危険性がある。その際の対応として、Zoom等によるオンライン会議システムを利用して聞き取り調査を実施することも視野に入れたい。
|
Causes of Carryover |
本研究プロジェクトは、日本各地に赴き現地でのフィールド調査によって推進される計画で、予算の大部分が旅費である。しかしながら、研究1年目の2020年度には新型コロナウィルス感染症拡大により外出制限がかかり、年間をとおしてほとんどフィールドに出向くことができなかった。そのため、研究費の大部分が使用できず、繰り越すことが必要となった。 2021年度にコロナウィルス感染症が終息を迎え、フィールド調査が可能となった暁には、調査旅費として使用したい。また、予算に余裕があれば、研究分担者や研究協力者を加え、調査に同行していただく。さらには、参考事例を得るために、渡航可能になれば海外調査も実施したい。
|
Research Products
(4 results)